吉田まゆみ『ロコモーション』
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単行本:講談社KCmimi(1983〜1984年) 全3巻
今年になって文庫化された『アイドルを探せ』などで有名な吉田まゆみが講談社の『mimi』で描いた連載作品。近年は、宙出版から『バラ色が目にしみる』『真夏の恋人』などを発表。
主人公は、テニスの大学チャンピオンの娘でありながら、親の離縁によって母子家庭で育った女子高生の桜井浩子(通称:ロコ)。彼女のアパートの隣室に住む女子大生・森山加世子と、その義弟でロコと同じ高校に通う修一、そしてロコの異母弟にあたるテニス界の若き新星・田辺雅之、といった面々とロコとの間で繰り広げられる青春群像が描かれた物語である。
一応、ロコ自身(および彼女の親友である伊藤エミ&ユミ)もテニス部に所属しているのだが、彼女達のテニスの場面は序盤で僅かに描かれるのみで、実質的なテニスの物語は雅之を中心として展開される。ただ、それも途中からは(物語の展開の都合上)段々と希薄になっていくので、正直、「テニス漫画」と呼んで良いかどうかは微妙なのだが、単行本の途中でテニスの「ワンポイント・レッスン」コーナーを入れるなど、作者自身がそれなりにテニスに力点を置いて描いていたことは伺える。
とはいえ、本作品のメインはあくまでロコを中心とした恋物語であり、ロコと雅之、加世子と修一という、微妙にオーバーラップする関係のこの二人の姉弟の並行描写が最大の見どころである。また、この時代ならではの独特のテンポで展開される恋愛模様が、今見るとかえって新鮮に思えるし、渡辺徹、サザン、初代いいとも青年隊、などをネタに使うなど、随所に時代性を感じさせる点も、今読むとこれはこれで(色々な意味で)面白い。
まぁ、今の時代において普遍的にお勧め出来る作品ではないが、今の少女漫画では得られない独特の雰囲気が味わえる作品なので、テニスへの興味の有無に関わらず、色々な意味で一読の価値はあると言えよう。個人的には、もう少し「父親」の話も出して欲しかった、とも思うけどね。