村枝賢一「サムライ銀」(『村枝賢一短編集1 ウルフガン』収録)

ウルフガン (アッパーズKC)

ウルフガン (アッパーズKC)

連載:『週刊少年サンデー』(1988年)
単行本:講談社アッパーズKC『村枝賢一短編集1 ウルフガン』(2002年)


 サンデーの人気サッカー漫画『俺達のフィールド』の作者である村枝賢一の初の短期連載作品。掲載誌は週刊少年サンデーだが、単行本は講談社刊の「初期短編集」の中に収録された。近年はヤンマガの『RED』や、マガジンZの『仮面ライダーSPIRITS』などが有名。ちなみに、奥方は『ラジカル庭球団』の森真理
 主人公は、チャランポランでありながらも義理人情に厚く、喧嘩に強い高校生・東川銀。彼の通う学校内には「第一テニス部」と「第二テニス部」が並存し、彼は部員の少ない第一テニス部の部長・三村智子の頼みにより、数合わせのために部員登録されていたのであるが、第二テニス部の顧問・竹田から、部の存続を賭けた混合ダブルスの試合を申し込まれ、唯一の男子部員である銀は智子と共にその試合に挑むことになる。
 本作品では、「40セット以上差が開かない限り時間無制限」「ラケットの取り替えは禁止」という荒唐無稽な特別ルールを竹田によって課せられた中で、銀がそのルール以上に破天荒な戦法で立ち向かっていく姿が描かれており、いわば、本作品の前年に連載されていた『燃えるV』をも凌ぐレベルでの「格闘テニス」を、本作品の数年後に連載された『人気者でいこう』に近いノリで描いたような、そんな作品である。なので、決して真面目な気持ちで読める内容ではないが、ここまで開き直って「テニス」という概念そのものを破壊しようとする姿勢は、むしろ痛快ですらある。
 ただ、作品としての完成度としてはかなり微妙で、二つのテニス部の並存理由や対立の要因などについてはやや説明不足のため、読者としても物語展開に感情移入しにくい。また、絵的にも今の作者の画力とは程遠い、非常に粗い絵柄なので、これでは全四回の短期連載が精一杯だよなぁ、と思わされるレベルであることも事実である。
 いわば、(奥方の作品と同様)サンデーのテニス漫画史上におけるアダ花的存在であり、あまり万人にお勧めは出来ないが、個人的には結構楽しめた。まぁ、ヒロインが私の好みだったから、というのもあるかもしれないけどね。