黒田洋介(原作)/おおのじゅんじ(漫画)『未来改戦Dクロゥス』

連載:『週刊少年チャンピオン』(20002年)
単行本:秋田書店チャンピオンコミックス(2002年) 全3巻


 『無限のリヴァイアス』や『スクライド』などのアニメ作品で有名な脚本家・黒田洋介が原作を担当し、『私立ジャスティス学園』のコミック版や『Hot Shot』などの作者・おおのじゅんじ(大野純二)の手によって描かれた作品。近年、この二人のタッグによるアニメ企画『スパイダーライダーズ〜オラククの勇者達〜』のコミック版がwebコミックとして『アニメX』内で連載された後、先月からはリィド社の『月刊少年ファング』にて最連載されることになった。
 201X年、主人公・結城みらい(♂)が父の住む美濃島を訪れるところから物語は始まる。子供の頃から、重要な局面において正しい「選択」をすることが出来ずにいた彼が、この島で起きた一つの「事件」を契機として「未来の歴史を変えるための戦い」に巻き込まれ、その中で様々な「選択」を強いられる局面へと追い込まれていくことになる。
 結城は元テニス部所属で、物語冒頭では彼の所属していたテニス部員達が美野島を訪れており、その中に本編中での重要人物・陸奥タダシも含まれている。結城と陸奥はかつてはダブルスを組んでいた間柄であり(その場面は第二巻の中盤の回想シーンで描かれる)、この二人の関係の推移が本編中での物語の一つの重要な核となっている。
 とはいえ、本編中ではテニスの場面はあくまで断片的に登場するのみであり、基本的には『スクライド』の世界観に『リヴァイアス』の人間模様を混ぜ込んだような雰囲気のSF作品である。個性的なキャラ、臨場感溢れる描写、そして先の読めない展開は魅力満載であり、読者を不思議な物語世界へと誘っていく。
 ただ、やはりタイムパラドクスものの難しさか、もしくは様々な要素を強引に詰め込もうとした結果か、今一つ「面白くなりそうな素材」を生かしきれないまま終わってしまった、という印象は拭えない。ラストもあまりに唐突であるし、おそらくは打ち切りだったのだろう。やはり、週刊誌で描くには少しマニアックすぎる題材だったのかもしれない。