竹田真理子「ラブ・オール」(『MOMOウェルカム』収録)

MOMOウェルカム! (講談社コミックスなかよし)

MOMOウェルカム! (講談社コミックスなかよし)

初出:『なかよしデラックス』(1984年)
単行本:講談社KCなかよし『MOMOウェルカム』(1985年)


 『りんごの星時間』の作者である竹田真理子の初期の短編作品。『なかよしデラックス』に初掲載され、単行本としては『MOMOウェルカム』の中に収録されている(同時収録は表題作の他に、「ヒロイン気分でいさせてね」と「ストップ!風紀委員さま」)。作者は80年代は『なかよし』を中心として、90年代以降は『kiss』『デザート』『BE LOVE』など、講談社系の各誌で様々な作品を残した。
 主人公は、高校の写真部に所属する数少ない女子部員の一人・鈴木幸恵。彼女が通う学校の創立祭の企画で、優勝賞金付きの「混合ダブルスのテニス大会」が開催されることになり、写真部からは彼女と犬猿の仲の男子部員・戸村が、恋人の小崎美加子と出場する予定だったのだが、小崎が怪我をしてしまう。出場条件が「カップル限定」となっていたため、やむなく部長の命令により、もう一人の女子部員である幸恵が、戸村の恋人になりすました上での出場を余儀無くされる、という物語。
 一応、戸村は中学時代のテニス経験者だが、幸恵は全くの素人な上、当初は戸村との息も全く合わずに苦戦するのだが、それでも少しずつ、彼とのコンビネーションを組み立てていくことになる。ただ、作品全体のテーマは、テニスよりも戸村と幸恵と美加子、そして幸恵の家庭教師の及川との人間関係に重点が置かれているので、あまりテニス描写自体は充実しているとは言えない。
 ただ、肝心の人間関係描写の方はそれなりにきっちり描けており、短い頁数の割には密度の濃い内容だと私は思う。正直、ラストの一部に関しては「これでいいのかなぁ……」という気がしなくもないが、それはそれである意味リアルな展開であるし、無理にフォローを入れようとしない方がかえって綺麗な構成と言えるのかもしれない。
 作者の履歴の中でもかなり初期の作品であり、絵柄は『りんごの星時間』に比べるとまだ発展途上の様子ではあるが、こういった一昔前の地味な作風も、今見るとそれはそれで新鮮に思えたりもする。人によっては、この頃の絵の方が好き、という人もいるだろうしね。