志賀公江「白い不死鳥(フェニックス)」(『真っ赤なストローク』/『スマッシュをきめろ!』第5巻収録)

初出:『週刊マーガレット増刊号』(1968年)
単行本:集英社創美社)マーガレットレインボーコミックス『真っ赤なストローク』(1977年)
    ダイソーコミックシリーズ『スマッシュをきめろ!』第5巻(2002年)


 『スマッシュをきめろ!』や『真っ赤なストローク』の作者である志賀公江が描いた短編作品。デビュー当時の作品らしく、単行本としては真っ赤なストローク(マーガレットレインボーコミックス)の巻末と、ダイソー版『スマッシュをきめろ!』の第五巻に収録されている。ちなみに、現時点で私が把握している限りにおいては、「テニス」を取り扱った漫画としては史上最も古い作品である。
 昭和42年の夏、軽井沢の避暑地にて、画家の娘で難病に苦しむ穂高かおるが、大阪学園高校の一年生・沢木妙子と出会うところから物語は始まる。中学時代に優勝経験を持ちながらも、一年生故に球拾いばかりに従事させられ、やむなく一人で早朝練習を繰り返していた沢木と、そんな彼女のことを密かに山荘から見つめつつ自分の人生を悲観していたかおるの心の交流が二人の人生に変化をもたらしていく過程が、それぞれのモノローグを中心として描かれていく。
 テニス漫画としての本作品の見どころは、三年生でインターハイ優勝者である藤岡と沢木との、物語終盤における対決の場面である。正直言って画力自体は(『スマッシュをきめろ!』と同レベルで)決して高いとは言えないが、技巧派と呼ばれる藤岡に翻弄されつつも自分のテニスを貫き通そうとする沢木の情念の描き方は、最初期のテニス漫画としては十分に評価に値すると言えよう。
 全体通して非常に重い雰囲気の作品であり、いかにも60〜70年代的な雰囲気の悲劇性の漂う作風なので、昨今の少女漫画の感覚で読むと少々面喰らうであろうが、一つの物語としてはまずまずの完成度だと思う。その後の『スマッシュをきめろ!』および『真っ赤なストローク』を生み出す上での、作者にとっての重要な歴史的作品と言っても過言ではあるまい。