葉月玲「恋は二人のせいじゃない」(『君が笑えば』『スターライト・カーニバル』収録)

君が笑えば (フラワーコミックス 葉月玲傑作集)

君が笑えば (フラワーコミックス 葉月玲傑作集)

初出:『少女コミック増刊』(1996年)
単行本:小学館フラワーコミックス『君が笑えば』(1996年)
    小学館フラワーコミックス『スターライト・カーニバル』(1998年)


 「熱愛したいの」の作者でもある葉月玲が、少女コミック増刊にて描いた二本の短編作品。正確には、二本目は「恋は二人に甘くない」というタイトルであり、しかも収録された単行本は別(一本目が『君が笑えば』、二本目が『スターライト・カーニバル』)なのだが、明らかに同一主人公の続編なので、ここでは二本をまとめて一つの連作として取り扱う。ちなみに『君が笑えば』には他に「瞬間(とき)をきれ!」が、『スターライト・カーニバル』には他に「Maybe Lonely Baby」が収録されている。
 主人公は、アイドル歌手「タカヤ」のファンである高校二年生の日奈。実は彼女がタカヤのファンになったのは、彼女がほのかに恋心を抱いている同級生でテニス部部長の北条貴也と同じ名前だから、というのが契機だったのだが、彼の前ではその気持ちは出せずに喧嘩ばかりの日々を送っていた。そんな彼女が貴也の誕生日パーティーに出席するか否かで思いを巡らす、というのが一本目の概要で、二本目はその後の二人の物語が描かれる(その内容は一本目のラストのネタバレになるので省略)。
 まず、画力に関しては「熱愛したいの」に比べて大幅にレベルアップしており、物語のテンポも良く、非常に「読みやすい作品」に仕上がっている、というのが第一印象である。物語内容としては、ストーリー的に少々ツッコミ所(「最初から日付くらい確認しとけよ」とか)はあるものの、主人公の心情描写は丁寧であるし、良くも悪くも「普通の少女漫画」といったところか。
 残念ながらテニスの描写は少ないので、あまり「テニス漫画」と呼べる内容ではないが、それでも二本目に関しては、「部活」を扱う少女漫画にとっては非常に普遍的なテーマであり、多くの(特に男性の)人々の共感を得られる作品ではないかと私は思う。