浜口奈津子「BAD GIRLに聞いて」（『永遠の人』収録）

永遠の人 (フラワーコミックス なっちゃんのマイフェイバリット)

連載：『別冊少女コミックCheese!』（1997年）
単行本：小学館フラワーコミックス『永遠の人』（1998年）

　『ICE』や『TATOO/LOVER』などで有名な人気作家・浜口奈津子が『Cheese!』で初めて描いた短編作品。その後、「なっちゃんのマイフェイバリッツ」シリーズの第一巻『永遠の人』に収録された（同単行本には他に「氷のキス」も収録）。作者は現在も短編を中心として活躍中。
　主人公は、高校二年生の女子テニス部員・堀尾由麻。彼女が、部活の後輩でありテニスプロとしての契約も結ぶことが決まった一年生の海老沢直気と、部室で「気まずい状態」で鉢合わせするところから物語は始まる。過去の恋愛経験から、男性全般に対して心を閉ざそうとする彼女と、そんな彼女との距離を詰めようとする直気との微妙な関係の推移が本編を通じて描かれていく。
　まず物語の主軸である恋愛面に関しては、「いかにも小学館の少女漫画」と言わんばかりの、ちょっとハードな設定が印象的である。とはいえ、この人の作品にしては性描写自体はあまり露骨ではなく、その辺が苦手な人でもあっさりと読める内容と言えよう。
　そしてテニス描写に関しては、テニスの場面が描かれる場面は僅かではあるが、フォームや球の軌道など、それなりに丁寧な描写に仕上がっていると言って良いし、直気のプロ入りに絡む設定などもきっちりと調べた上で描かれている。また、作者のコメント欄に「この頃、伊達公子ちゃんやめちゃって、ショックだったなー」などと描かれていることからも、決してただの「恋愛のための背景設定」としてのみ選んだ訳ではないことが伺える。
　ちなみに、この単行本の作品は全て「スポーツ選手とその恋人」という関係を描いた内容なのだが、いずれも作者のそのスポーツへの「愛」が感じられるところに好感が持てる。やはり、スポーツ好きな人が描く少女漫画は面白い、ということを改めて再認識させられた作品であった。