七島佳那『クレイジーLOVEゲーム』

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連載:『ChuChu』(2006〜2007年)
単行本:小学館ちゅちゅフラワーコミックス(2007年) 全1巻


 小学館の期待の新鋭・七島佳那が『ChuChu』にて描いた短期連載漫画。作者は『りぼんDX』にてデビューした後、姉妹誌である『ChuChu』を主戦場として様々な作品を発表し、本作品の前後には『まきもどしの恋の詩』と『Kick!』を連載している。ちなみに、本作品の単行本には他に「月並みローズ」と「プリンセスシップ」という短編作品も同時収録されている。
 主人公は、高校一年生の女子テニス部員・高科一沙(たかしな・かずさ)。彼女はテニス選手としてはまだ初心者の域であるが、男子テニス部のサブキャプテンである黒崎真吾への想いを胸に、いつもハイテンションで部活に打ち込んでいる。物語は、その黒崎が同学年の女子テニス部員の石原愛子に告白し、そしてフラれている場面を一沙が目撃するところから始まり、やがてこの三人に男子テニス部キャプテンの安倍弘一を加えた四人の、複雑な部活内恋愛が展開されていくことになる。
 恋愛を主軸とした三話連載で、しかも登場人物が四名ということもあり、物語全体の中でテニスの占める割合は少ないが、それでもテニス部ならではの描写が要所要所で垣間見れており、「テニス部漫画」としては十分に評価出来る。ただ、主人公が試合をする場面が一度も無いので、ちょっとそれが物足りない気もするが、短期連載の恋愛漫画にそこまで求めるのは、さすがに無理があるか。
 漫画としての技術は、絵的にも構成的にもまだ発展途上であり、やや読みにくさを感じる頁や、物語全体の流れがやや分かりにくい箇所もあるが、それらの欠点を補って余りある(若手ならではの)「勢い」と、ツッコミのテンポの良さは秀逸である。また、四人の主要登場人物全員がいずれも個性的かつ魅力的なキャラであり、個人的には非常に好感が持てる。最後のオチも綺麗にまとまっており、今後の活躍を期待出来る逸材と言って差し支えなかろう。ちなみに、個人的に一番好きなのは、82頁のオマケ漫画だったりするんだけどね。