小島正春「ハートにスマッシュ」（『キッカー烈男』第3巻収録）

初出：不明（チャンピオン系？）
単行本：秋田書店少年チャンピオンコミックス『キッカー烈男』第3巻（1980年）

　『青空スタンバイ』の作者・小島一将の「小島正春」名義時代の単行本『キッカー烈男』の第3巻（コミックターミナルにて、デジタルコミックとして購入可能）の一番最後に収録されているテニス漫画。近年の作者は「大和正樹」名義で『プレイコミック』などの青年誌で活躍中。
　物語は、主人公・花谷大介が、つばめが丘学園高校の1年3組に転入してくるところから始まる。このクラスには、美人で男勝りで文武両道の女子生徒・里香がいることから、男子生徒達は形見が狭い思いをしていた。物腰が柔らかく、スマートな優等生的な雰囲気の花谷が里香に興味を持つ一方で、里香は花谷に対して気分を害する出来事が続き、最終的には諸々の経緯を経て、二人がテニスで対決することになる。
　里香は中学時代にテニス部の部長を務めていたのに対し、花谷は全くのテニス素人だったのだが、かつて剣道をしていた頃の経験を生かして、滅茶苦茶なフォームでテニスに挑むことになる。この単行本に収録されている３作品の中では最もリアリティに欠ける展開ではあるが、この時代の漫画としては、これくらいの破天荒な展開は十分にアリだろう（ちなみに、他に剣道をモチーフにしたテニス漫画としては、ほぼ同時代の「きまってないのにキメマルくん」や、近年の『見上げてごらん』などがある）。
　花谷大介は、この人の作品の主人公としては珍しいスタイリッシュなキャラではあるが、個人的にはステレオタイプな単細胞キャラより、こういった独特な雰囲気の主人公の方が好感が持てる。まぁ、少年漫画としては微妙な内容かも知れないが、たまにはこのような物語も悪くはないのではないかと。