小村あゆみ「シルバーアッシュ」(『ハイブリッドベリー』第1巻収録)

ハイブリッドベリー 1 (マーガレットコミックス)

ハイブリッドベリー 1 (マーガレットコミックス)

初出:『マーガレット』(2004年)
単行本:集英社マーガレットコミックス『ハイブリッドベリー』第1巻(2004年)


 2003年度マーガレット年間ベスト新人賞を獲得した小村あゆみが、同誌の別冊付録に描いた短編作品。単行本としては『ハイブリッドベリー』の第一巻巻末に収録されており、現時点で単行本収録された漫画の中では最も初期の作品である。現在は同誌にて『ミックスベジタブル』を連載中(もうすぐ最終回)。
 主人公は、入学したての女子高生・江本(名は不明)。高校に入学したら髪を銀色に染めようと考えていた彼女が、入学式で銀髪の男子生徒・神谷旭を目の当たりにし、「先越された」と打ちのめされるところから物語は始まる。その後、なぜか校内では「神谷旭の髪の毛を持っていると恋が叶う」という噂が広まり、彼の髪の毛を巡って江本と神谷の間での屈折したドラマが展開されることになる。
 一応、江本はテニス部員なのだが、本編中でテニスの練習風景が描かれているのは一コマのみ(しかも、明らかな手抜き描写)なので、スポーツ漫画として読むべき価値はない。単行本の表題作である『ハイブリッドベリー』が、少女漫画としては非常に質の高い野球漫画であるだけに、それなりのスポーツ描写を期待していた身としては少々残念ではあるが、物語の内容上、それほど重要な設定でもないので、このような期待を込めて読んだ私の方が筋違いであることは言うまでもない。
 恋愛漫画としては、最後の数頁の展開(特に神谷の描写)がやや唐突なのがタマに傷だが(もっとも、このような描き方が最近の少女漫画のセオリーなのかもしれないが)、まずまず面白い内容だとは思う。個人的には、江本も神谷も感情移入しやすいキャラだしね。ただまぁ、やはり『ハイブリッドベリー』に比べると、漫画としての完成度はまだイマイチかな、と思わされる箇所が多いこともまた事実である。
 ちなみに、江本の下の名が無いのは「マンガの中で無理やりフルネームを出すのは好きじゃない」という作者のポリシーに由来しているらしい。なお、ネーミングの由来は東映→南海→阪神の彼だそうで、本編中でも「エモやん」と呼ばれる箇所がある。