永田正実「花火 散る咲く」(『恋愛カタログ』第24巻収録)

恋愛カタログ (24) (マーガレットコミックス (3623))

恋愛カタログ (24) (マーガレットコミックス (3623))

初出:『P.Margaret』(2002年)
単行本:集英社マーガレットコミックス『恋愛カタログ』第24巻(2003年)


 2000年代の別マを支えた長期連載漫画『恋愛カタログ』の作者・永田正実が、同作品の連載中に、別マの増刊号として発行された『P.Margaret』に掲載した短編作品。単行本としては『恋愛カタログ』の24巻に収録された。現在の作者は別マにて『シャウト!』を連載中。
 主人公は、大学のテニスサークルに所属している19歳の上田恵麻。サークルの新歓合宿の時に、圧倒的なテニスの実力を持つ佐古貴志に一目惚れするも、本人を前にすると、その気持ちを悟られないよう、無意識のうちに邪険な態度を取り続けてしまいう自分に、自己嫌悪を感じていた。そんな恵麻が、親友の尾崎麻衣子と共に夏祭りに行く計画を立てていく最中で、佐古との距離を縮めようと試行錯誤を繰り返していく過程が描かれる。
 正直、最初は「あぁ、典型的なツンデレ少女漫画か」と思っていたのだが、後半で意外などんでん返しが起こり、読者としてはやや茫然とした状態のまま、静かに告げられる恋の結末を受け入れ、そして読後はどこか不思議な余韻に浸ることになる。正直、恋愛物語としてはやや詰め込みすぎな感もあるが(それが、長期連載を続けていた作者にとって久々の短編作品だったから、なのかどうかは分からないが)、これはこれで独特の味わいがあって面白い。
 とはいえ、最後が唐突すぎたせいか、やはり佐古の感情(というか行動理念?)が今一つ理解しきれないまま終わってしまったのも事実。まぁ、この人は、そういった「ちょっとつかみ所のない男性」を描くことに定評のある人みたいなので、それはそれで少女漫画的には良いのかもしれないけど。
 テニス漫画としては、冒頭のほんの数コマの練習風景くらいしか描かれないので、このブログで紹介すべき作品ではないのかもしれないが、最近はそんなこと言ってると本気でネタが尽きてしまうので、強引ではあるが、取り上げさせてもらった。でも多分、この読切だけのために24巻だけ購入する人は、私の他にはいないだろうな……。