池田理代子『ふたりぽっち』

連載:『週刊マーガレット』(1971年)
単行本:集英社マーガレットコミックス(1971年)
    集英社漫画文庫(1976年)
    中央公論社池田理代子中篇集2 章子のエチュード』(1989年)


 『ベルサイユのばら』『オルフェウスの窓』などで有名な歴史少女漫画界の巨星・池田理代子の初期の短期連載作品。最初の単行本では「ごめんなさい…」が同時収録されており、中央公論社版では「章子のエチュード」「桜京」「ラムダのとき」と共に収録されている。昨今の彼女は声楽家として活動する傍ら、朝日新聞土曜版にて四コマ漫画『ベルばらkids』を連載中。
 主人公は、私立愛聖女学院中学二年で、テニス部所属の松原かおる。母子家庭に育ち、半年前までは公立中学に通う身だった彼女は、母親の突然の申し出で名門女子校に転入することになるのだが、その背後には、彼女の母親との再婚を考えていた大実業家・桧垣正雄の存在があった。正男の一人娘の令子とかおるは同じクラスで犬猿の仲であったが、両親の結婚を機に、少しずつ打ち解けようとしていく。しかし、かおるの出生に伴う「二重の秘密」が、やがて二人を精神的に追い詰めていくことになる。
 かおるはテニス部の花形的存在で、後輩からも慕われる存在であるのに対して、令子は上級生から可愛がられる甘え上手な美少女として描かれている。つまり、女子校における対極的なアイドル像を象徴するための記号として、「テニス部」であり、それ以上の意味は本作品にはない。
 シリアスを基調としつつ、時折コメディ色を交ぜながら中盤まで物語はテンポよく進行していく。特に、令子のかおるに対する「ツンデレ百合」とでも呼ぶべき屈折した感情の表現は、好きな人達にとっては相当な萌えツボと言えよう。
 しかし、物語の終盤で、凄まじい急転直下の衝撃が読者を襲う。かおるの出生の「一つ目の秘密」に関しては、途中ですぐに読者には察しがつくのだが、「二つ目の秘密」と、それを知った後のかおると令子の行動に、読者はただひたすら茫然とさせられたまま、物語は終幕を迎えてしまう。「悲劇」こそが池田理代子作品のエッセンスであるということを改めて痛感させられる、そんな作品であった。