芹沢なほ子「青空にラストスマッシュ」
初出:『週刊マーガレット』(1979年)
単行本:未発売
『週刊マーガレット』の1970年26号に掲載された61頁の読切作品。この号は『エースをねらえ!』(第二部)が休載中で、一方でこの号から『お助け人走る!』がテニス編に突入することになるのだが、そのような雑誌事情が本作品の掲載に影響を与えたのかどうかは不明。作者の芹沢なほ子は1970年代のマーガレットを中心に活躍し、単行本としては『風にゆれるラブソング』(全1巻)を残した。
主人公は、私立東山高校の軟式テニス部の副部長・望月ユカ。弱小部ながらも日々練習に励んでいた彼女達に、体育館の建て替えに伴ってテニスコートを潰すことが決定された、という報が届くところから物語は始まる。テニスコートの存続のため、署名運動を始める彼女達の奮闘と、そんなユカをからかいながらも見守るサッカー部のスター選手・仁科との恋模様が描かれる。
テニス描写自体は序盤の練習風景のみに限られており、その意味ではどちらかというと「テニス漫画」というよりは「テニス部漫画」と呼ぶべき内容であろう。安易な解決策を取らずに「現実に高校生が出来る方法」で危機に立ち向かおうと考える辺りは、部活漫画としてのリアリティに根ざした展開だと思う(ちなみに、巻末コメントによると、作者も中学時代にテニスの経験があるらしい)。
ただ、結局最後まで問題が解決しないまま終わっているのは、どこか消化不良感が否めない。一応、仁科との関係についてはそれなりに進展してはいるのが「救い」の描写としての役割を果たしてはいるものの、物語の重点が明らかに署名運動の方に置かれている以上、やはり最後は何らかの代替案を提示する形で終わって欲しかったのだが、まぁ、これはこれで一つの作風としてはアリか。
ちなみに、当時のマーガレットは『エースをねらえ!』の他にも『翔んでるルーキー』(バレー)や『白球を叩け!』(卓球)など、まだスポーツ少女漫画が元気だった時代であり、そのような時代背景の中で本作品をどう位置づけるか、というのも興味深い命題と言えよう。