高木美恵子「ウィニングショット」

連載:『花とゆめ』(1980年)
単行本:未発売

 
 白泉社花とゆめ』の1980年第4号〜第9号にかけて連載された作品。作者の高木美恵子は『別冊マーガレット』の少女漫画スクール出身で、デビュー作は「ハートに火をつけて」(デラックスマーガレット)。本作品の前に「青春の時間割」「ヴィナスの城」なども連載していたが、いずれの作品も単行本発行には至らなかった。
 主人公は、星綾学院高校に転向してきた一年生の浅野なつみ。同校の名門テニス部への入部を希望した彼女は、学園の理事長の娘である同級生の朝吹玲奈と試合をさせられることになる。玲奈は前年度の全国中学選手権大会の優勝者であり、初心者のなつみは当然のごとく1ゲームも奪えずに惨敗するが、その試合の様子を見ていた佐久間コーチは、なつみの「特殊なプレイスタイル」から彼女の潜在能力を見出し、やがて玲奈を中心とする「四天王」達と同格の特別強化選手として彼女を抜擢することになる。
 全体的に『エースをねらえ!』の影響が目立つ作風ではあるが、上記の「なつみvs玲奈」の最初の試合に関するエピソードなどは、全てを精神論に還元してしまう山本鈴美香とは対照的なロジカルな展開で面白い。その後の彼女への指導法なども、まだ当時としては珍しかった(今では主流の)戦法を取り入れるなど、より「テニスのスポーツとしての面白さ」を伝えることに重点を置いた作風と言える。
 しかし、華々しく巻頭カラーで始まったものの、人気には恵まれなかったようで、次々と掲載順位を落とし、最後は巻末まで追いやられて(しかもかなり強引に話をまとめた展開で)僅か6話で終焉を迎えてしまう。四天王の中の一人などは殆ど出番もないまま終わっており、無惨な打ち切りと言わざるを得ない。
 スポーツ漫画としては絵的にやや難があるものの、単行本化すらされずに終わってしまうには、あまりに惜しい作品だと思う。当時の花ゆめは『パタリロ』『ガラスの仮面』『スケバン刑事』など、まさに「黄金時代」と呼ぶにふさわしい面々だったのだが、当時の読者層の心を掴むためには、本作品は色々な意味で地味すぎたのかもしれない。そして花ゆめはこの後18年間にわたり「テニス漫画不毛の時代」が続くことになる。