矢也晶久『ブギーキャットNAVI』

ブギーキャットNavi 1 (ジャンプコミックス)

ブギーキャットNavi 1 (ジャンプコミックス)

連載:『月刊少年ジャンプ』(2000-2001年)
単行本:集英社ジャンプコミックス(2000-2001年) 全2巻


 『タトゥーン・マスター』や『なんだかコワレ丸』などで有名な矢也晶久が『月刊少年ジャンプ』で描いた作品。当初は読切版として2001年に描かれ、その翌年から連載版がスタートした(読切版は第1巻末に収録)。近年の作者は『ZOO』(原作:乙一)のコミック版や『ひぐらしのなく頃に』のアンソロジーなど、多方面に活躍中。
 主人公は、高校一年生の小厨野(おずの)ライカ。高校入学早々、喧嘩に明け暮れつつ、幼馴染みで女子テニス部所属の小珠ひびきとの関係に悩んでいた彼の元に、遺伝子学者で海外在住の父から、「女の子を一人ヨロシク頼みたいんだわ」という謎のビデオレターが届くところから、本格的に物語が始まる。その少女の名は凪乃式ナビ。猫と人間の二つ姿を持つ謎の存在で、彼女は「人間の持つ『好き』という感情」を理解するために、ライカと共に同居することになる。
 「人外」&「幼馴染み」との三角関係という、SFラブコメの王道設定で真っ向から勝負した作品である。このジャンルの場合、「人外ヒロインの設定をいかに面白く組み立てるか?」と「女の子をいかに可愛く描けるか?」という二点が勝負の分かれ目になる訳だが、残念ながら前者に関しては、きっちりと描ききる前に打ち切られてしまったようで、(少なくとも私には)イマイチ釈然としないまま終わってしまった。
 後者に関しては、髪の描き方にクセがあり、タレ目率が高く、(この時代にしては)やや古い絵柄なので、人によって好き嫌いは分かれると思うが、女性キャラ、特に小珠の微妙な表情の描き方は絶品で、心情描写も上手い。
 テニスに関しては、第二話でライカと男子テニス部の一年生エースとの対決が描かれる程度で、それ以外の場面では小珠の背景設定としての機能しか果たしていない。まぁ、これは連載が短期で終わってしまった以上、仕方のないことだろう。
 正直、もう少し続ければ面白くなりそうな話だと思うのだが、やはり既存のSFラブコメとの差異を序盤で強調出来なかったのが失敗の要因か。途中から登場するキャラ達もイイ味出してるだけに、ちょっと勿体ない作品だと思う。