田中美智子「テニスコートでジャンプ!」

連載:『週刊少女コミック』(1972年)
単行本:未発売

 若木書房系の貸本漫画などで活躍し、バレー漫画『それいけワン、ツー』の作者としても有名な田中美智子が、『週刊少女コミック』1972年20号に描いた短編作品(同誌内における「そよかぜとスポーツシリーズ」の第二弾と記されている)。少コミのテニス漫画史の系譜に位置づけるとすれば、「青春スマッシュ」(ひだのぶこ)と「打ち込め!スマッシュ!」(小室しげ子)の狭間の時代の作品ということになる。
 主人公は、葵高校の女子テニス部員・ゆう子(姓不明)。物語は、葵高校に転校してきた不良男子学生・尾崎協(きょう)が、別の男子学生との口論の末にバイクで下校するところから始まる。女性絡みの喧嘩騒動で前の学校を飛び出してきたという彼に興味をもったゆう子は、やがて彼がテニス経験者であることを知り、ジュニア選手権の地区予選への出場を目指して彼の下で猛特訓することになる、という物語。
 基本的には「テニスを題材にした恋愛漫画」なのだが、その割には全体に占めるテニスの練習の割合が高く、ゆう子のモチベーションも協とテニスの双方にバランスよく向けられているので、スポーツ漫画愛好家としては感情移入しやすい。ただ、絵的には、この当時の少コミの中でも決して上手い方とは言えないこともあり、テニス描写それ自体に魅力があるかと言われると、少々厳しいところではある。
 ちなみに、テニス漫画で「尾崎」と言えば、まっさきに思いつくのは『エースをねらえ!』の尾崎勇(&愛)であるが、本作品の方が掲載時期は早い。とはいえ、おそらくは別に共通のモデルとなった人物がいる訳でもなく、ただの偶然であろう。
 物語全体に関する雑感としては、「悪くはないが、特に目立つ所もない」といったところ。よくある話と言えばよくある話だが、綺麗にまとまってはいると思う。ただ、それ以上の特筆すべき何かがあるかと言われると、特に思いつかない。まぁ、この時代の短編漫画としては、ほどほどの佳作と評価するのが適切かな。