椎名高志『GS美神 極楽大作戦!!』

連載:『週刊少年サンデー』(1991-1999年)
単行本:小学館少年サンデーコミックス(1991-1999年) 全39巻
    小学館少年サンデーコミックスワイド版(2006-2007) 全20巻


 現在、『絶対可憐チルドレン』を連載中の椎名高志出世作。1993年にはTVアニメ化し、その後は劇場版も制作された。単行本総数39巻は、当時のサンデーの新記録でもある。作者の他の代表作としては『Mr.ジパング』など。
 現代世界における幽霊騒動を解決するGS(ゴーストスウィーパー)達の物語。絶世の美貌と卓越した実力を持つGSである美神(みかみ)怜子と、その美貌に魅せられて時給250円で彼女の助手として働く煩悩少年・横島忠夫、そして彼女達に助けられた幽霊のおキヌの3人が、幽霊絡みの様々な事件を解決していく過程が描かれていく。守銭奴で唯我独尊な美神と、そんな彼女に(下心故に)どこまでも従属する横島の二人のやりとりは、本作品特有の絶妙なバランスのコメディに仕上がっている。
 そして、単行本6巻の「リポート3 庭球霊ファイナル・ステージ!!」においては、美神達3人が、美神の師匠・唐巣の依頼で軽井沢を訪れ、美神のライバル・小笠原エミと共に、ウィンブルドン出場の夢を断たれて成仏出来ずにいる幽霊・竜崎霊華を除霊するために、彼女とテニス(の形式を借りた霊能力対決)をする、という物語が描かれている。
 サブタイトルはおそらく『エースをねらえ! ファイナルステージ』のパロディであろうし、竜崎霊華というネーミングも、明らかに「彼女」が語源だろう(風貌はあまり似ていないが)。一話限りの一発ネタの割には、フォアもバックもきっちりと「テニス漫画」っぽく描けている辺りに、20年間サンデーで描き続けることになる実力者の片鱗が垣間見れる。この人は基本的に「ノリ」と「台詞回し」で評価されることが多いのだが(実際、この話の最後の横島の台詞は秀逸だと思う)、実は絵も結構上手いんだよね。
 ちなみに、今回のレビューを書くにあたって、10数年ぶりに本作品を読み返してみた訳だが、中高生の頃は圧倒的に「おキヌ>美神」だったのに、今読むと普通に美神さんが「可愛い」と思えてしまう。これが歳をとったということか。まぁでも、やっぱり一番は小竜姫様だけどね。