「お気にめすまま」(『恋はなに色?』収録)

初出:『ボニータ』(1977年)
単行本:秋田書店プリンセスコミックス『恋はなに色?』(1980年)


 1970年代後半〜1980年代前半の頃に飽きた書店で活躍した小森麻実の短編作品の一つ。初出はボニータで、単行本としては『恋はなに色?』に収録された(同時収録は表題作のシリーズの他に「恋の不等式」)。作者の他の作品としては『夢色いろいろ』など。近年は創美出版などでレディースコミックを発表している。
 主人公は、女子大生の朝比奈麻衣子。取り巻き的な男友達とのテニスに興じていた彼女の前に、謎の男子学生・南原貢が現れて、彼女に真剣勝負を申し出るところから物語は始まる。一連の貢の無礼な振る舞いに激怒する麻衣子であるが、実は貢は麻衣子の友人・真の双子の弟であり、密かに麻衣子のことを想う真の心境を察して、二人の仲を取り持とうと色々思案を巡らせることになる、という物語。
 まぁ、物語の本筋自体は「よくある話」なのだが、このタイトルの持つ意味が、最後のオチに意外な形で結びついている辺りは上手いと思う。というか、この題とこの冒頭の展開から、このラストは予想出来ないよなぁ。この辺の妙なギャップが秋田的と言えば秋田的な訳だが。
 テニス描写はあくまで冒頭の場面だけで、最初の「つかみ」としては重要なエピソードなのだが、以後の展開にはあまり関係しないし、そもそも麻衣子や貢がテニス部員or経験者なのか、という点についても説明されていない(まぁ、別に説明しなくてもさして問題の無い内容なのだけれど)。
 ちなみに、朝比奈という名のテニス選手は他の漫画にも登場するのだが、時系列的に考えると本作品が一番早いのか? というか、誰か元ネタになった人がいるのだろうか? 心当たりがある人がいれば教えて欲しい。
 全体通した印象としては「良くも悪くも70年代的な少女漫画」といったところ。ネタバレを避けるためにこれ以上の説明が出来ないのであるが、全体的に綺麗にまとまってはいるものの、それほど格別に御勧めするほどのインパクトは無い、という印象。まぁ、私はそれなりに楽しめたけどね。