星合操『七海とウィング』

七海とウィング (1981年) (ひとみコミックス)

七海とウィング (1981年) (ひとみコミックス)

連載:『ひとみ』(1981年)
単行本:秋田書店ひとみコミックス(1981年) 全1巻


 『ユニコーンの恋人』などで有名な星合操が、秋田書店の『ひとみ』で4ヶ月にわたって描いた初期の連載作品。単行本は同社から発売され、巻末に短編「恋人よ」も収録。近年の作者は宙出版を中心に、様々なハーレクイン作品や『冬のソナタ』のコミック版などを発表している。
 主人公は、湊高校テニス部の二年生・堀内七海(ななみ)。チビでドジで万年補欠部員の彼女だが、一年生にして同部のエースとなった志方翼(よく)と付き合っており、いつも練習そっちのけでチアガールとして翼の応援にばかり精を出している。そんな二人の関係が、フランス人形のような風貌の一年生・峰岸鞠子や、翼と同じ中学出身の青柳ゆうりなどが割り込むことによって、少しずつ揺れ動いていく、という物語。
 七海は年上だが子供っぽい風貌の甘ったれで、長身で大人ぶった振る舞いをする翼とのやりとりは非常に微笑ましく、見ている側としても非常に心地よい。また、そんな二人を暖かく見守る二宮兄妹(夏彦・洋子)もまた、それぞれに本音と友情の狭間で実にイイ味を出している。特に、クールな洋子が稀に見せる動揺時の表情などは、私としては結構な萌えツボ。
 テニス描写に関しては、断片的に試合のカットが描かれる程度なので、徹頭徹尾テニス部内の話であるにも関わらず、「テニス漫画」として読むべき要素は殆どない。ただ、その数少ないカットはそれなりに丁寧に描かれており、「テニス部漫画」としての作品のクォリティにこだわろうとする姿勢には好感が持てる。
 あとは、おそらく単行本描き下ろしと思われる「七海の“えっ”日記」や、いわゆる「広告スペース」に描かれた作者のセルフツッコミなども、個人的には結構好き。ベタベタ甘々の恋物語を描きながら、七海のアホっぷりを少し冷めた視点から評している辺りが、ちょっと面白い。
 まぁ、私としてはこの時代の少女漫画の絵は無条件で大好きなので、どうしても評価は甘くなってしまう訳だが、客観的に評価するなら「30年前の小学生女児の感性」に共感出来る人なら読んで損はない作品、といったところかな。