かずはじめ『明稜帝 梧桐勢十郎』

明稜帝梧桐勢十郎 (7) (ジャンプ・コミックス)

明稜帝梧桐勢十郎 (7) (ジャンプ・コミックス)

連載:『週刊少年ジャンプ』(1997-1999年)
単行本:集英社ジャンプコミックス(1998-2000年) 全10巻
    集英社文庫コミック版(2006-2007年) 全6巻


 『MIND ASSASSIN』などで有名なかずはじめの代表作の一つ(単行本数としては現時点で最長)。元来は読切りとして描かれた「外道」(『かずはじめ短編集 UNIFY』収録)を、学園を舞台とした物語へとリニューアルさせた作品。近年の作者は『ジャンプSQ』にて『Luck Stealer』を連載中。
 全校生徒5000人を抱える巨大学園・私立明稜高校において、超人的能力と暴君的性格から「明稜帝」の異名を持つ生徒会長・梧桐勢十郎(ごとう・せいじゅうろう)と、彼の暴走に振り回される生徒会役員達、そして彼のライバルである「四天王」と呼ばれる学内の実力者達の物語を描いた作品である。
 梧桐は生徒会長という立場から、学内の様々な問題に対して介入し、理不尽極まりない方法で事態を解決しようとする。そして、JC版7巻に収録されている「ダブルス!!」(第62話&第63話)においては、明稜高校のテニス部の依頼によって、梧桐と(実はテニス部の幽霊部員でもある)四天王の一人・半谷工(はんや・たくみ)が、テニスの名門・玉輿学園の長岡&大塚ペアとのダブルスの試合に臨むエピソードが描かれる(ちなみに、その前にJC版4巻の時点で、類似競技のスカッシュに挑戦する話もある)。
 梧桐の言動はひたすら唯我独尊で、周囲には理解しがたい方法で様々な問題の解決を目指すが、結果的にそれが功を奏して事態を解決に導くこともあれば、ただひたすらに暴走しただけで終わることもある。そして、このテニスの回に関しては完全に後者の部類の話であり、最後のオチに関しても「それがアリなら、試合する必要なかったんじゃ……」と思わせられる。とはいえ、そのあまりに不条理な展開は、それはそれで「よく分からない爽快感」が得られることもまた事実である。
 絵的にも物語的にもクセの強い内容なので、人によってかなり好き嫌いが分かれるだろうし、正直言ってあまり普遍的にお薦め出来る代物ではないが、90年代末期の(売上が低迷していた)ジャンプという特殊な時代が生み出した異色作という意味で、同誌を語る上では一度は目を通しておくべき作品と言えよう。