小林隆志+α『星の丘学園物語 学園祭』

星の丘学園物語学園祭公式コミックファンブック (電撃コミックス)

星の丘学園物語学園祭公式コミックファンブック (電撃コミックス)

初出:単行本描き下ろし
単行本:メディアワークス電撃コミックス(1998年)


 1998年に発売されたプレイステーション用の恋愛シミュレーションゲーム『星の丘学園物語 学園祭』(製作:アトリエ彩)の公式コミックファンブック。風上旬Dr.モロー、宮須弥などの16人の作者による短編集構成となっているが、本稿ではそのうち、小林隆志(本作品の他、様々なアンソロジーコミックスで活躍した漫画家)が担当した「恋煩い」について取り上げる。
 主人公・村田の同級生である秋月伊吹が率いるテニス部は、学園祭の出し物のハンバーガー屋の準備に勤しんでいたが、その準備を手伝いに来る約束をしていた筈の村田がなかなか現れない。テニス部を手伝っていた同級生の美少年・綾小路新(あらた)と共に職員室に向かった伊吹は、村田が体調を崩して寮に帰宅したと聞き、心配になって男子寮へと向かうことになる。
 伊吹は色黒ポニーテールの活発娘であり、ゲーム中における10人の主要攻略対象キャラの中では、メインヒロインである雪柳なずな(新体操部)以外の唯一の運動部員である。彼女の担当声優である折笠愛が、このゲームに登場する女性声優の中では段違いに格上であることから察するに、それなりに重要な役割を担うキャラとして位置づけられていると想定される。
 しかし、原作のゲームのコンセプトがあくまで「学園祭」であるため、伊吹と新が主役を担う「恋煩い」においても、残念ながら彼女達がテニスの腕前を披露する場面は皆無であり、ラケットやボールすら登場せず、あくまでも「食べ物屋を担当する体育会系部員」としての役割に留まっている。
 あくまで「ファンブック」として発売されていることから分かる通り、基本的には「ゲーム版を楽しんだ人々」を対象とした内容であり、この本だけで十分に満足出来る作品とはいえない。そして、残念ながら私はゲーム版を遊んだことがない訳だが、それでも「ちょっとやってみたいな」という気分にさせられる程度には興味をそそられる内容であった。