青木琴美『僕の初恋をキミに捧ぐ』

僕の初恋をキミに捧ぐ 1 (フラワーコミックス)

僕の初恋をキミに捧ぐ 1 (フラワーコミックス)

連載:『少女コミック』(2005-2008年)
単行本:小学館フラワーコミックス(2005-2008年) 全12巻


 小学館を中心に活躍する青木琴美の代表作『僕は妹に恋をする』のスピンオフ作品。ただし、こちらの方が連載期間は長く、本編同様に実写映画化も実現するなど、本編に劣らぬ人気作となった。現在の作者は『Cheese!』にて『カノジョは嘘を愛しすぎてる』を連載中。
 主人公は、『僕妹』に登場した紫堂高校の「男子寮長」垣乃内逞と「女子寮長」種田繭。逞は心臓病故に20歳まで生きられない身体であり、そんな彼を、彼の主治医の娘である繭は必死に支えようとする。物語は彼等が小学生の頃から始まり、様々な経緯を経て高校に進学し、『僕妹』の主人公達との邂逅を経て、着実に迫り来る「死」に向けて逞と繭が互いの愛を確かめ合いながら、未来への道を探っていくことになる。
 上述の通り、物語のテーマは非常に重く、それ故に「描いて良い表現」には様々な制約があったと思うのだが、医療倫理や患者&家族の感情描写が実に丁寧に描かれており、読み応えがある。互いに互いを傷付けまいとするが故に傷付け合ってしまう逞と繭、そして彼等の周囲の者達のドラマは(ネタバレを避けるために詳細は書けないが)実に味わい深い。
 そんな中で、作中で最も重要なサブキャラの一人である逞の親友・鈴谷律(すずや・りつ)と、その兄で生徒会長の昴(こう)はどちらもテニス部所属で、途中から繭もテニス部に関わることになる。特に文武両道の昴は、心臓病故に運動に制限のある逞との対比においてその存在感が非常に眩しく、そのための演出機能としてのテニス部という設定も有効に機能している。
 正直、最後の結末に関しては色々と批判もあるとは思うが、作者は最初からこの形で描く予定であったようだし、ファンブックにおけるコメントを読む限り、確かにそれはそれでアリな手法だと思う。実際、これ以外の方法で結末を迎えるのは無理なんじゃないかな、とも思うしね。