久米田康治『行け!!南国アイスホッケー部』

行け!!南国アイスホッケー部 22 (少年サンデーコミックス)

行け!!南国アイスホッケー部 22 (少年サンデーコミックス)

連載:『週刊少年サンデー』(1991〜1996年)
単行本:小学館少年サンデーコミックス(1991〜1996年)全23巻
    小学館少年サンデーコミックスワイド版(2000〜2002年)全11巻


 『かってに改蔵』や『さよなら絶望先生』で有名な久米田康治出世作。元々は第27回小学館新人コミック大賞を受賞した読切作品であり、その後、連載作品として週刊少年サンデーで5年間連載されることになった。なお、作者は同作品以前に「地上げにスマッシュ!」というテニス漫画の読切を描いていたことが本作中で明かされているが、本編は未発表のため全貌は不明。
 主人公は、カナダ帰りのアイスホッケー選手である高校生・蘭堂月斗。当初は、鹿児島の浜津学園に転校してきた彼が、同校のアイスホッケー部で巻き起こすスポーツ・コメディ漫画であったが、途中からはアイスホッケーとは無関係な下ネタ・ギャグ漫画へと変貌していく。そして、連載末期のエピソードの一つに「テニスでGO」(単行本22巻収録)という話が存在する。
 この話では、まずヒロインの岡本そあら&朝霧舞子がテニスに興じている場面を背景として、作者が「自分の高校テニス部の体験談」を語るくだりから物語は始まる。その後、唐突に現れた月斗が「世界ランカーの特別コーチ」の特訓を受けて、「イギリスのテニス大会」に出場することになる。
 この話の中で特筆すべきは、登場人物の大半が「実在の選手を下ネタ風にダジャレ変換したキャラ」という点であり、そのネーミングセンスは「良くも悪くも最低」と評する他にない。また、人名だけでなく、大会名やテニス用語の一つ一つに対しても「あまりに下品すぎて本気で批判するのも負けた気分にさせられるレベル」のダジャレ・ネタが披露されている。
 一方、当時のサンデーで連載されていた『LOVe』のパロディ・ネタも物語の中核部分に組み込まれており、その後の『改蔵』や『絶望先生』のエッセンスの一つとなる「他作品いじり」の芸風が既にこの時期に確立されていることが伺える。でもまぁ、全体的に面白いことは面白いけど、昨今の社会風刺色の強い絶望先生が好きな人には、あまり御勧め出来ない内容かな。