浦野千賀子「くだばれ秀才」

初出:『別冊マーガレット』(1968年)
単行本:未発売


 『アタックNo.1』で有名な浦野千賀子が、同作品の連載初期の頃に『別冊マーガレット』1968年10月号にて描いた読切作品。おそらくどの単行本にも未収録。時系列的には『うなる白球』の半年後に描かれた作品である。
 主人公は、青葉学園のテニス部キャプテン・香山今日子。彼女が友人の恵子(体操部キャプテン)&直美(卓球部キャプテン)と共に、学園の運動部の行く末について話し合っている場面から物語は始まる。
 噂によると、予算削減のために現存する運動部の一つが潰されることになり、その中で最も槍玉に上がっているのが、近年実績を残せていない野球部であるらしい。野球部のエース・高倉俊之に想いを寄せる3人は、野球部が潰れたら彼を自分の部活に引き入れたいと考えていたが、その野球部のコーチとして、学園一の秀才・百合原君江が就任し、活気を取り戻していることを知らされる。なんとか野球部を廃部に追い込むため、百合原にコーチをやめさせようと、3人は結託して百合原と対決することになる。
 百合原は秀才な上に美人で、人を見下す性格の「イヤな奴」として描かれているのだが、その一方で今日子の方も、上述の通り、かなり身勝手な性格であり、この後の展開においても、まるで悪役のようなやり口で百合原への嫌がらせを敢行する。それでも最終的には一応「友情」という言葉で強引にまとめられることになるのだが、正直、「それでいいのか?」というツッコミは禁じ得ない、とはいえ、初期の鮎原こずえも実は結構イヤな性格だったことを思えば、こういう型破りな話こそが浦野作品の味なのかもしれない。
 ちなみに、テニス描写に関しては、この時代にしてはきっちり描けており、そこはさすがに少女スポーツ漫画のパイオニアとして名を馳せることになる彼女の実力の片鱗を感じさせる。でもまぁ、よほどの彼女のファン以外は、あえて頑張って探し出してまで読むほどの作品ではないかな。