秋元康(原作)/木村千歌(作画)『あずきちゃん』

あずきちゃん (3) (講談社コミックスなかよし (803巻))

あずきちゃん (3) (講談社コミックスなかよし (803巻))

連載:『なかよし』(1993〜1997年)
単行本:講談社なかよしKC(1994〜1997年)


 AKB48のプロデューサーとしても有名な作詞家・秋元康が原作を、講談社系の様々な雑誌で活躍した木村千歌が作画を担当する形で、『なかよし』にて連載された作品。1995年からはNHKで三年間にわたって(小学五年生編のみが)アニメ化された。秋元康漫画原作者としての他の代表作は『りりかSOS』など。木村千歌に関しては『カンベンしてちょ!』などが有名。
 主人公は、小学五年生の少女・野山あずさ(通称:あずき)。彼女の前に、私立小学校から転校してきた美少年・小笠原勇之助が現れる場面から物語は始まる。当初はこの二人の恋愛劇を軸としつつ、最終的にはあずさが中学を卒業するまでの五年間の彼女の学園生活が、リアルタイムで描かれた。
 そんな中、3巻から始まる中学編では、新キャラとしてテニス部員の松岡竜一という少年が登場し、彼に誘われるままに、あずきもテニス部に入部することになる。ただし、テニスの場面の大半は竜一の描写であり、あずきに関しては練習風景のみで、彼女の試合は一度も描かれていない。それでも、中学編を語る上での重要な要素の一つであることは間違いあるまい。
 正直、小学生編では勇之助のあまりの天然っぷりにイラつくことが多かったのだが、中学生編に入ると、今度は「それはないよ、あずきちゃん……」と言いたくなるという、なかなかヤキモキさせてくれる展開が続く。でもまぁ、こうやって悩んで苦しんで周囲を巻き込んで困らせてしまうところが、本当の意味での「普通の女の子」なのかもしれないな、とも思う。
 そんな訳で、アニメ版の「小学生らしい、ほのぼの恋愛」が好きな人は少々違和感を感じるかもしれないが(実際、私も最初はかなり面食らった)、最後まで読み切れば、これはこれで悪くない。御都合主義だとか男性陣の心情描写不足だとか、ツッコミ所は色々あるが、低学年向けの月刊少女漫画誌でリアルタイムに描くなら、これくらいの話の密度が限界だろう。