村生ミオ『ときめきのジン』
- 作者: 村生ミオ
- 出版社/メーカー: 少年画報社
- メディア: コミック
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単行本:少年画報社ヒットコミックス(1980〜1981年) 全9巻
『ラブアタック5対5』の作者でもある村生ミオが、『週刊少年キング』で描いた初期の代表作であり、初の長期連載作品。現在の作者は『週刊漫画ゴラク』にて『SとM』、『プレイコミック』にて『1夫5妻』を連載中。
高校一年の陸上部員・泊仁(とまり・ひとし/通称:ジン)と、同じ陸上部の女子部員・森山聖子の二人を中心に、ジンの親友の世古弘、憧れの先輩である清水涼子、級友の不良少女・小林朝美、といった様々な高校生達のそれぞれの恋愛劇を、ジン達の卒業に至るまでの長期わたって描いた作品。
ジンは典型的な「特に取り柄もないのに、なぜかモテる主人公」であり、彼の周囲には次々と多種多様な美少女が登場し、彼に心惹かれていく。優柔不断な彼は、いつもそんな美少女達と聖子の間で気持ちが揺れ動くことになるのだが、一方で聖子も聖子で、そんな煮え切らないジンの態度に不安を感じ、様々な男子生徒からのアプローチに心を揺らすことになる。
そんな、作品を彩る美少女達の中の一角として、聖子の従妹で一学年下の倉本めぐみ(通称:メグ)と、高三編でジンと同じクラスになる島田みゆきという、二人のテニス部員キャラが登場する。ただし、二人ともテニスウェア姿が数コマ描かれる程度であり、実質的には設定として殆ど意味を成してはおらず、二人の間の部活内の相互関係なども特に描かれてはいない。
現在の作者の作風へと繋がる「セクシー漫画家」としての才能は本作品でも存分に発揮されており、聖子達の様々なお色気シーンなどがふんだんに取り入れられているが、作品全体を通じて印象的なのはむしろ、思春期の「性」への葛藤に悩み苦しむ等身大の少年少女達の姿である。ジンも聖子も、それぞれに嫉妬心や独占欲を相手に向けつつ、そこから生まれた様々な不安感が、他の異性への心移りへと繋がってしまう、そんな生々しくも初々しい恋愛模様を鮮やかに描ききった、80年代恋愛漫画の良作だと私は思う。