岡崎つぐお『春美120%』

連載:『週刊少年サンデー』(1983〜1984年)
単行本:小学館サンデーコミックス(1983〜1984年) 全6巻


 1980年代のサンデーにおいて、「SF」と「学園」という二つのジャンルで活躍した岡崎つぐおの初期の作品。作者はSF漫画家としては『ジャスティ』や『ラグナロック・ガイ』などが有名だが、本作品のような学園漫画のジャンルでも、『ただいま授業中!』などを生み出している。
 武道の達人である三人の兄を持ちながらも、スポーツとは無縁で繊細に育った主人公・松平春美(♂)が、高校入学後、紆余曲折の末にテニス部に入部し、やがてテニスの世界で「それまでの自分」の殻を打ち破っていく、という物語。ただ、本格的にテニス漫画となるのは物語の後半からで、基本的には彼の幼馴染みの榊原花子(通称:ハコ)との関係を中心としつつ、次々と登場する「春美に好意を抱く女生徒」達とハコとの対立を描くという、いかにもサンデー的な青春ラブコメがメインである。
 正直言って、作品全体としての評価はかなり微妙である。私自身は絵柄が好みだったので楽しんで読めたが、作品全体に漂う妙にまったりしたテンポなどは、評価が分かれるところであろう。また、物語展開も途中からかなり迷走した感が否めず、たとえば後半のメインキャラであった筈の水戸佐理(みと・すけまさ)も、(あまりに極端なキャラにしすぎて扱い辛くなったせいか)最終盤ではほぼ姿を消してしまっている。個別のエピソード自体はそれなりに面白いだけに、全体的な構成がちぐはぐなのが非常に惜しい。
 ちなみに、テニス描写については、はっきり言ってかなり淡白で、まともに試合が描かれている場面も少ない。ただ、テニス部の神谷部長はなかなか良い味出してると思うし、彼が春美をスカウトした理由(彼の潜在的才能をテニスに生かせると考えた根拠)もなかなか面白い(ただ、その設定を最後まで使い切れなかった点は残念であった)。
 まぁ、今読むとかなり古い作風の漫画なので、あまり多くの人々にお勧め出来る作品ではないが、1980年代のスポーツ・ラブコメ漫画が好きな人なら、きっと楽しめる内容だとは思う。ただ、テニス漫画としては、あまり期待しすぎない方が良いかもしれない。