神保史郎(原作)/せがわ真子(漫画)『青春はラブ・40』

青春はラブ40 1 (プリンセスコミックス)

青春はラブ40 1 (プリンセスコミックス)

連載:『プリンセス』(1976〜1977年)
単行本:秋田書店プリンセスコミックス(1976〜1977年) 全2巻


 昭和50年代に秋田書店の各誌で活躍したせがわ真子の初の連載作品。原作者は『サインはV』『花の子ルンルン』『ハロー!サンディベル』などで有名な神保史郎。現在のせがわ真子は、あおば出版などのレディコミ誌で活動中。一方、神保史郎はこの後、青年コミックの世界にも進出したものの、1994年に他界。
 中学一年生の主人公・水村美々が、手違いで入部してしまったテニス部の中で、キャプテンである榊原良にほのかな恋心を抱きながら青春を謳歌する、という物語。本編の冒頭で、運動音痴の美々に実はテニスの才能があるということを、テニス部顧問の谷真介は「ある理由」から見抜くことになるのであるが、その辺りの根拠付けが他のテニス漫画にはない独特の論法で、なかなか興味深い(本当にそのような定説があるのかどうかは知らないが)。
 とはいえ、本作品の本質はあくまで、美々と良、そして次々と現れる美男美女達のそれぞれの恋愛模様を描いた青春ドラマであり、テニスそのものが描かれる場面は全体通してかなり少なく、二巻に至っては殆ど出てこない。その意味で、あくまで本作品は本当の意味での「テニス漫画」ではなく、また「テニス部漫画」とも言い難い。
 ただ、少女漫画としての完成度自体は、それなりに高いと私は思う。神保史郎の紡ぎ出す複雑に入り組んだ人間模様と、せがわ真子の真骨頂とも言えるポエム調のモノローグとが見事に折り合って、重すぎず軽すぎず、絶妙なバランスの青春群像がさわやかに描かれている。
 中でも、響江梨子(ひびき・えりこ)と日下卓平(くさか・たくへい)が私としてはお気に入りである。特に日下は、一回だけのゲストキャラにしておくには惜しかったと思うし、せめて彼が再登場する機会があれば、もう少し「テニス漫画」としても読める展開になったであろうに、とも思う。
 30年前の秋田書店の単行本故に、現在ではかなりレアな存在であり、おそらく再版の可能性も低いと思われるので、興味のある人は古本屋で見つけたら即購入しておくことをお勧めする。