みやたけし『はるかなビシ』

連載:『週刊少年サンデー』(1985年)
単行本:小学館少年サンデーコミックス(1985年) 全3巻


 サッカー漫画のパイオニアの一人・みやたけしがサンデーで描いたテニス漫画。作者はジャンプ→サンデー→チャンピオンと渡り歩き、その全てでサッカー漫画を描いたという珍しい経歴の持ち主(『GO★シュート』『はしれ走』『風のフィールド』)。作者はその他にも多くのスポーツ漫画を描いたが、現在は『漫画TIMES』で『小料理みな子』(原作:南たかゆき)を連載中。
 貧乏でラケットを買うことも出来ず、空き地で手製のラケットでテニスを楽しんでいる兄弟・尾崎修一(小6)と尾崎真(しん/小4)が主人公。二人の前に偶然現れたテニスクラブのエリート・駿矢了(すがや・りょう)との出会いをきっかけに、二人が本格的にテニスの世界にのめり込んでいく過程が描かれている。ちなみに、タイトルにある「ビシ」とは、ラケットのスウィートスポットで打球を捕らえた時の擬音であると同時に、二人の姓名の頭文字でもある。
 テニス漫画としては、「視空間」などの本作品独自の概念を用いつつ、ほどほどの現実感とほどほどのトンデモ技を織り交ぜた、まずまずのバランスに仕上がっていると言える。泥臭い主人公達の躍動感が伝わってくる試合描写も緊迫感があり、特に終盤の真vs小川の戦いはなかなか面白い。
 しかし、残念ながら人気は今一つだったようで、三巻の最後では中途半端な形で終わってしまっている。個人的にはツンデレな兄貴がなかなか萌えなのだが、やはり全体的に登場キャラ達に華がなく、物語も地味だったので、それもやむをえないかな、とも思う。私見としては、序盤のギャグの割合をもう少し減らした方が話に入りやすかったかな、と思うのだが、その辺は読者それぞれの好みもあるだろうから、難しいところなのだろう。
 おそらく発行部数も少ないであろうし、再版の可能性は限り無く低いと思われるので、あまり目にする機会はないかもしれない。また、今見るとどうしても絵が古いので、読みにくさを感じるのも事実であるが、テニス漫画史における異色作として、一見の価値はあると思う。