河あきら『朝陽(あさひ)翔びだす!』

連載:『プリンセス』(1982年)
単行本:秋田書店プリンセスコミックス(1983年) 全1巻


 1970年代には『週刊マーガレット』で『いらかの波』などを連載していた河あきらが、1982年に『プリンセス』で描いた作品。作者はその後、レディコミ界で『ご町内のミナさん』(少年画報社)などを発表した後、2003年にはNHK連続ドラマ『ちゅらさん』のコミック版なども執筆。現在は『すてきな主婦達』にて『Wonder!』を連載中。
 女子テニス部キャプテンの西川法子に一目惚れしてテニス部に入部した高校一年生の主人公・倉田陽(よう)が、中学以来の友人であるマネージャーの吉野みどりや、ライバルの正木との間で繰り広げる様々なエピソードを描いた物語。全編通してまともに試合が描かれることは一度もないが、基本的にストーリーはテニス部内でのみ展開しており、その意味では「テニス漫画」というよりは「テニス部漫画」と紹介した方が適切であろう。
 本作品の最大の魅力は、二大ヒロインとも言うべき西川法子と吉野みどりであると私は思う。それぞれにタイプの異なる美少女で、基本的にはこの二人を巡る男性陣の動向を軸とした、さわやかな「部活漫画」としての純情ラブコメが展開されており、その軽やかでストレートな作風故に、読者としても普通に感情移入しやすい。
 ただ、一方で男性陣に関しては、主人公である陽はそれなりに美少年に描かれているものの、他のキャラが今一つパッとしないのが残念なところである。特に、男子テニス部キャプテンの長谷川や生徒会役員の斉藤などは、役割上、もう少し「見せ場」を作って欲しかったし、ライバルである正木に関しても、物語終盤における彼の心境をもう少し深く描いてくれた方が、よりラストに重みが出たのではないかと思う。
 とはいえ、全体通じてよくまとまった良作だと思う。(単行本の表題作にはなっているものの)合計で130頁程度の短い物語なので、誰でもあっさりと読める御手軽な作品と言えよう。残念ながらamazonですらデータは検出されなかったので、現時点では入手は非常に難しいとは思うが、作者がまだ現役の人気作家であることを考えれば、いずれ文庫化されることを期待して待っているのも良いであろう。