桂田祐一『スーパーショット仁』

スーパーショット仁 (ジャンプスーパーコミックス)

スーパーショット仁 (ジャンプスーパーコミックス)

連載:不明
単行本:集英社創美社)ジャンプスーパーコミックス(1987年) 全1巻


 1980年代にジャンプ系の雑誌で連載されたと思われるテニス漫画。しかし、ジャンプスーパーコミックスは初出が記載されていないため、特定が出来ない(ちなみに、このレーベルの単行本の発行所は創美社である)。作者の他の作品などについても一切不明。
 カリフォルニアのジュニア選手権で優勝し、アメリカテニス界でその名を轟かせた15才の主人公・水島仁(じん)が、行方不明の母親を探すために日本に帰国するところから物語は始まる。日本ではヤクザの功刀屋(くぬぎや)家に居候しつつ、テニスの名門・庭球院高校に編入し、テニス部に入部して日本の大会でもその実力を発揮することになる。
 本作品の最大の特徴は、ひたすら破天荒な仁の性格にある。審判には平気でクレームをつけ、言い分が通らなければ試合中の事故を装って審判を脅し、日本に着いたらあえて「ステレオタイプな日本人」に変装して騒動を巻き起こし、挙げ句の果てには試合中にボールを○ってしまう(ネタバレにつき割愛)。試合中も意味不明な奇策を次々と連発しつつ、最終的には究極の「スーパーショット」を生み出すことになるのであるが、この最後のショットは歴代テニス漫画の中でもトップ級のトンデモ度であり、まさに本作品のタイトルに恥じない必殺技である。
 しかし、あまりにも暴走が過ぎて読者がついてこれなかったのか、僅か四話で終了してしまう。まぁ、画力のレベルに関しては決して高いとは言えないし、物語展開も正直微妙なので、打ち切られても仕方ないかな、とは思う。
 それでも、庭球院高校(このネーミングもどうかと思うが)テニス部の部長である新倉勝(にいくら・まさる)はそこそこいい味出しているし、コーチのミランダや功刀屋家の一人娘の暢子(&サブキャラの冴子&良美)など「華」も豊富で、それぞれ個別のキャラとしてはそれなりに魅力的な面々が揃ってはいる。
 全体的な雰囲気としては、数年後のサンデーの『人気者でいこう』あたりに近いノリなので、同作品の雰囲気が好きな人なら、それなりに楽しめるかと思う。ただ、全体的にパワー不足の感は否めないので、あまり一般的にお勧め出来る作品とは言えない、かな。