小島一将『青空スタンバイ』

連載:『月刊少年チャンピオン』(1981年)
単行本:双葉社100てんランドコミックス(1982年) 全1巻


 チャンピオン系の雑誌で連載された数少ない(唯一の?)テニス漫画。しかし、単行本は秋田書店ではなく、双葉社の100てんランドコミックスとして発売された。作者の小島一将は、他にも同レーベルから『みあげた玉三郎』、『白い狩人』などの単行本を残している。
 主人公は、かつての名門・大和学園高校テニス部の一年生・瀬川諒。お互いの父親の出張によって幼馴染みの栗原まどかの家に下宿することになった彼の前に、スポーツ万能の転校生・新藤直樹が現れるところから物語が始まり、彼等を主力としてテニス部が、県下の有力16校によって争われる「シルバーカップ」の団体戦を戦っていく展開が描かれる。
 いきなりヒロインの入浴シーンから始まり、その後も軟派な場面がチラホラと見られる本作品ではあるが、物語の本筋の展開はかなり純度の高いテニス漫画であり、次々と出てくる強敵達と諒との対決が毎回描かれる。それぞれの敵キャラはいずれも個性的で、同時代の『テニスボーイ』や『ビッグショット』を彷佛とさせる王道スポーツ漫画の展開ではあるが、両作品ほど魔球が頻発する訳でもなく、(トリッキーな動きはあるが)テニス描写自体は意外に正統派である。
 ただ、細かく見ると色々と物語的に不自然な点も多い。たとえば県大会の一回戦では五組(シングルス×3&ダブルス×2?)の団体戦となっているのが、二回戦以降はなぜかこれが三本制(シングルス×2&ダブルス×1)に変わっている。本来ならば上位戦で試合数が減ることはありえない筈であり、作者も微妙に迷走しながら描いていたことが伺える。また、準決勝があっさり飛ばされてしまっている点から察するに、元々短期連載の方針だったにせよ、当初の予定よりも微妙に早めに打ち切られてしまったのかもしれない。
 とはいえ、単行本一冊の作品で終わらせてしまうには非常に勿体ない、エンターテイメント性溢れる作品だと私は思う。今見るとかなり古い絵柄&センスではあるが、テニス漫画としての面白さが濃密に凝縮されており、単行本一冊のテニス漫画の中ではかなり上位に位置付けるベき作品と言えよう。