新谷かおる『ぶっとび!!CPU』

ぶっとび!!CPU (1) (MF文庫)

ぶっとび!!CPU (1) (MF文庫)

連載:『ヤングアニマル』(1993〜1997年)
単行本:白泉社ジェッツコミックス(1995〜1996年) 全3巻
    メディアファクトリー文庫(2003年) 全2巻


 『エリア88』『ふたり鷹』『砂の薔薇』などで有名な新谷かおるが『ヤングアニマル』で不定期連載していた作品(1997年にはOVAも発売)。ちなみに作者の奥方は『スマッシュ!メグ』の佐伯かよのであり、一部の新谷作品の女性キャラは彼女が描いている(逆パターンもある)。最近は同人活動も活発で、和田慎二島本和彦園田健一などとのコラボレーション作品も描いている。
 電脳研(パソコン研)に所属する高校生の高岡章が、秋葉原の路地裏で、人間の女性の姿をした謎の「パソコン」を購入し、そのオーナーとして認められるところから物語は始まる。彼はその人型パソコンを「ミミ」と名付け、彼女と共に共同生活を送りつつ、次々と襲い来る様々な事件に立ち向かっていく。そのコンセプトから、よくCLAMPの『ちょびっツ』の元ネタではないかと言われる本作品であるが、設定的にはこちらの方がよりエロティックな内容となっている(例:「インストール」)。
 で、なぜ本作品をこのレビューで取り上げるのかというと、作中の人間側のヒロイン(『うる星やつら』のしのぶ的ポジション)である島田加奈子がテニス部員であり、更にテニス部の部長である小石川愛とミミがダブルスを組んで戦う場面が第一巻で描かれているからである。テニス自体が描かれるのはその話のみで描写も薄いのだが、物語上、それなりに重要なエピソードなのである(また、小石川部長は後半でも再登場する)。
 ハードな戦記物などを得意とする新谷かおるのファン層にとって、本作品はかなり異色に映るであろうが、よくよく読んでみると細かい部分で新谷かおるの独特のマニア臭漂うセンスが鏤められており、意外に面白い。また、どうしてもエロスの側面の印象が強いのだが、物語のテーマ自体は結構ハードである。ただ、そのテーマが今一つ語り尽くせぬまま終わってしまっており、やや消化不良感も残ることも否めない。とはいえ、性的描写に嫌悪感を抱かない人なら、それなりに楽しめる内容と言って良いのではないかと思う。