藤原栄子『うわさの姫子』

連載:『小学三〜六年生』(1975〜1985年)
単行本:小学館てんとう虫コミックス(1975〜1986年) 全31巻


 昭和50年代の小学館の学習雑誌で絶大な人気を誇った藤原栄子の長期連載シリーズ。姉妹編として、低学年向けの『おはよう姫子』も存在し、1997〜1999年には『コミック・ゴン』において『ウェディング姫子』も発表された。作者の他の代表作としては、アニメ化もされた『魔法少女ララベル』などがある。
 スポーツ万能の小学生・梅宮姫子(主人公)と、ボーイフレンドの岡真樹(おか・まさき)を中心として、彼女達が様々なことにアグレッシブに挑戦していく物語。学年誌ごとの並行連載のため、同雑誌でも年度ごとに内容が異なっており、全編通じて計13部のパートから構成されているのだが、その中の第10部&第11部(第22巻〜第29巻)において、姫子はテニスに挑戦することになる。
 第10部では、テニス部のエース・松下絵美の誘いで姫子がテニス部に入部し、テニス選手として一から成長していく過程が描かれる(その途中で、モデルの仕事に挑戦したりもする)。第11部では、有名テニス選手を母親に持つ田代沢リマの登場によって引き起こされる様々な人間関係のトラブル、強敵・ドラゴンズとの戦い、そして白鳥学園からの引き抜き騒動、といった物語が展開される。いずれの話においても、様々な逆境に追い込まれながらも屈しない姫子の精神的な強さと、真樹との恋に悩む乙女心がストレートに描かれており、読者の共感を誘う。
 本作品の最大の魅力は、通常の小学生では絶対に不可能な「非現実的な展開/描写」にあるのだが、それはこのテニス編においても変わらず、火の玉サーブや殺人スマッシュなど、同じ出版社の『スマッシュ!メグ』を彷佛とさせる魔球が登場する。ただ、そういったテニス漫画としてのトンデモ度は第11部の方が上なのだが、物語全体としては第10部の方が面白いと思う(正直、リマ編は少々クドい)。
 てんとう虫コミックスは廃刊化が早いため発行部数が少なく、特に22巻以降は確実にプレミア価格となっているので、入手は非常に困難である。だが、それだけの苦労をかけてでも読む価値のある名作であることは間違いない。