こがわみさき「サムシン ライク ハレーション」(『しあわせインベーダー』収録)

初出:『月刊ステンシル』(2000年)
単行本:エニックス・ステンシルコミックス『しあわせインベーダー』(2001年)


 エニックス(現:スクエア・エニックス)の『Gファンタジー』の増刊号として創刊された少女漫画雑誌『月刊ステンシル』(現在は休刊)に掲載された作品。単行本としては、『しあわせインベーダー』の中に(「ふたりなみだ」「るいるい」と共に)収録されている。作者のこがわみさきは、以前はラポートで「湖川みさき」の名で活躍していたが、この頃から主戦場をエニックス系雑誌に移し、現在は『ガンガンパワード』にて『陽だまりのピチュ』を連載中。
 親戚でもないのになぜか「同じ顔」を持つ高校生一年生の最上(もがみ/通称モガ/♀)と信野(しんの/♂)が、球技大会の軟式テニスの混合ダブルスの選手に選ばれてしまうところから物語は始まる。顔も性格もそっくりなのに(そっくりだからこそ?)仲が悪い二人が、クラスの委員長のテニス部のマネージャーをも巻き込む形で様々な葛藤を経て、最終的には少しずつ意気投合していく姿が描かれる。
 一応、モガは中学時代からのテニス経験者ということで、軟式テニスの基本を皆に教える場面などがあり(作者曰く、94年頃の改正前の旧ルールらしいが)、それなりに丁寧に練習の場面は描かれているものの、試合自体に関してはあっさりと描写されるにとどまっている。ただ、試合自体は本作品の主要なテーマではないので、物語全体の構成としてはそれで問題ないと思う。
 私はこの人の作品を読んだのはこの単行本が最初なのだが、いずれも「非現実的な話」が妙にまったりした絵柄とテンポで描かれており、なんとも言えない独特の雰囲気が醸し出されている、というのが率直な感想である。本作品においても、モガと信野の序盤の会話や、終盤の試合の場面などはもっとテンションが上がっても良い筈なのに、モガのモノローグを中心とした不思議なテンポの作風故に、最後まで、良くも悪くものんびりとした雰囲気のまま物語は進行していく。
 まぁ、普通のスポーツ漫画の感覚で読める内容ではないし、いかにも「マニア誌の作品」といった雰囲気であることは確かだが、多分、好きな人は凄くハマれる作品だと思う。