許斐剛「テニスの王子様(読切版)」(『テニスの王子様』第5巻収録)
- 作者: 許斐剛
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2000/10/04
- メディア: ペーパーバック
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単行本:集英社ジャンプコミックス『テニスの王子様』第5巻(2000年)
テニス漫画史上最長の単行本巻数記録を築き上げた『テニスの王子様』の連載開始の一年前に『週刊少年ジャンプ』に掲載された同名の読切作品。一応、キャラ設定が連載版とは微妙に異なるので、ここでは一つの独立した作品として扱う。作者の許斐剛(このみ・たけし)は、本作品の前に同誌でボディーガード漫画『COOL』を連載していた。
青春大学のテニスサークルに所属する竜崎奈々子の前に、12才の謎の少年・越前リョーマが現れ、グリップの握り方に関してアドバイスするところから物語は始まり、その後、奈々子を強引に口説こうとする同サークル所属のインターハイ経験者・佐々部に対してリョーマは喧嘩を売り、彼とテニスで対決することになる。
上記から分かる通り、連載版ではリョーマの従姉である奈々子が竜崎姓のヒロインとして、第一話の悪役である高校生・佐々部は大学生として登場する(後者は、髪型が連載版とは違う)。他にも、リョーマが○○○経験者であったり、米国帰りではなかったりと、色々と設定上の違いはあるのだが、物語展開自体は連載版第一話と非常に良く似ている。その意味で、連載版のパイロット版的存在と言えよう。
テニス描写に関しては、基礎的な技術論から始まり、実践的な戦術論を経て、最後は格闘テニスに至るという、テニス漫画として表現可能な様々な要素が凝縮された内容となっており、物語全体に占めるテニスの密度・濃度はかなり高い。その意味で、試合よりも人間ドラマの次元で評価されることが多い他のテニス漫画とは対象的に、本作品はあくまで試合内容そのもので勝負するジャンプ本流の正統スポーツ漫画の系譜と言えよう。
絵柄に関しては、まだこの時点ではかなり発展途上であり、散々「粗い」と言われていた連載初期の頃と比べても更に粗い。ただ、リョーマの唯我独尊な性格や試合中の流血など、本作品のエッセンスと呼ぶべき魅力は既にこの時点で確立されているので、連載版が好きな人であれば、一度は目を通しておくべき作品であることは間違いない。