芳原のぞみ『ガールクレイジー』

ガールクレイジー (りぼんマスコットコミックス)

ガールクレイジー (りぼんマスコットコミックス)

連載:『りぼん』(2001年)
単行本:りぼんマスコットコミックス(2001年) 全1巻


 現在は『まんがタイム・ラブリー』や『まんがホーム』など、芳文社系の四コマ漫画誌で活躍中の芳原のぞみが、かつて『りぼん』で連載していた作品。作者は他に『りぼん』時代に『私と王子様』『お笑い少年少女』『杏ちゃんのめくるめく日々』『5-ファイブ-』などの単行本を残している。
 主人公は、高校一年生の女子テニス部員・埴井みく(「みく」は「未」と「糸ヘンに句」なのだが、webでは表示不能なのでここでは平仮名で表記)。彼女の幼ない頃からの憧れの存在であり、テニス部の先輩でもある原田友憲(通称:とも兄)と、その弟でプレイボーイの原田なつめ、そして彼女の親友でテニス部の同期の千葉篤子(通称:あっちゃん)の三人との間での人間関係を描いた物語であり、少女漫画の王道とも言うべき「性格が正反対の兄弟と、ヒロインと、その親友」という構図での恋模様が展開される。
 テニス描写に関しては、物語の序盤で、部内の先輩との対決やライバル校との対抗戦、といった形で軽く描かれた上で、その後は上記の四角関係の推移の方を軸に物語が展開された後に、最後のクライマックスでもう一度、意外な組み合わせでの試合がおこなわれ、その顛末と共に物語は幕を閉じる。基本的には恋愛漫画だが、物語の節々でテニスが重要な役割を果たしている。
 絵柄に関しては、あまりクセのない「普通に上手い少女漫画」といった印象で、数少ないテニス描写もそれなりに丁寧に描かれているので、全体的な作風自体は、比較的万人受けするタイプと言っても良かろう。
 個人的には、あっちゃんが結構萌えツボだったので、終盤で彼女の恋の結末がきちんと描かれなかったことが(その後の台詞で説明されてはいるものの)、少し残念なところなのだが、まぁ、主人公の方もきっちり最後まで描かれている訳ではないので、これはこれで「あえて読者の想像に委ねる」という一つの手法と考えても良かろう。
 物語自体は「よくある話」と言ってしまえばそれまでなのだが、御約束を御約束としてきっちり描いた作品なので、安心して読める内容であることは確かである。