竹内桜『ぼくのマリー』

ぼくのマリー 1 (ヤングジャンプコミックス)

ぼくのマリー 1 (ヤングジャンプコミックス)

連載:『週刊ヤングジャンプ』(1994〜1997年)
単行本:集英社ヤングジャンプコミックス(1994〜1997年) 全10巻


 現在、白泉社の『ヤングアニマル』で『ちょこっとSister』(原作:雑破業)を連載中の竹内桜の、『ヤングジャンプ』時代の出世作。1995年には岩田光央宮村優子の主演&DJでラジオドラマ化されて人気が更に上昇し、1997年にはOVA化を果たした。 
 物語は、大学生のマッド・サイエンティスト・雁狩(かりがり)ひろしが、同じ大学のテニスサークルに所属する憧れの女性・真理をモデルとした女性アンドロイド・マリを作成するところから始まる。当初はマリを人目に晒すことを避けようとしていた彼だが、すぐにその存在が真理を初めとするテニスサークルの面々に知られてしまい、やむなく彼は皆に彼女のことを「妹」として紹介し、以後は彼等を中心として様々なトラブルが引き起こされていくことになる。
 雁狩は全くの運動音痴なのだが、真理と親しくなるためにテニスサークルに参加しており、やがて物語の途中からはマリも同じサークルに入ることとなるのだが、テニスの試合そのものが描かれるのは序盤のみであり、以後は基本的に「背景設定」としてのテニスサークルにすぎない。本作品の主題はあくまで、雁狩、マリ、真理の三角関係を中心としたラブコメであり、そこに様々なゲストキャラが絡んで物語を盛り上げることになる。
 まぁ、はっきり言って設定自体は陳腐であるし、要は「男の妄想」を具現化した作品と言ってしまえばそれまでなのだが、物語のテンポが絶妙で、展開も小気味良いため、あまりベタベタしたクドさは感じられない。また、物語の後半ではそれなりに深い人間ドラマやハードな問題提起も繰り広げられており、ただのラブコメでは終わらない内容でもある(ただ、最後の解決法は、その問題提起に対する答えとしては「逃げ」でしかないようにも思えるのだが……)。
 とはいえ、やはりその魅力の根幹はキャラ萌えにあると思うので、本作品を楽しめるかどうかは、作中で「自分の萌えキャラ」を見つけられるか否かにかかっていると言えよう。私の場合は、二〜三巻で登場する某少女が直球ド真ん中なので、それだけで十分なんだけどね。