瀬口たかひろ『オヤマ!菊之助』

オヤマ!菊之助 19 (少年チャンピオン・コミックス)

オヤマ!菊之助 19 (少年チャンピオン・コミックス)

連載:『週刊少年チャンピオン』(1996-2001年)
単行本:秋田書店チャンピオンコミックス(1996-2001年) 全25巻


 当初は「まついもとき」名義で成年漫画で活躍していた作者が、「瀬口たかひろ」と名を改め、『週刊少年チャンピオン』で描いた作品。1997年には日高のり子主演でCDドラマ化もされた。作者は本作品の後に同誌で『恋愛出世絵巻えん×むす』を連載した後、『マガジンZ』『ヤングガンガン』『ヤングマガジン嵐』などを舞台に、出版社の枠を超えて幅広く活動中。
 主人公は、有名歌舞伎一座の跡取り息子・藤井菊之助女形の勉強という名目で名門女子校に転校し、そこで出会った様々な女子生徒達と淫らな行為に及ぶ、という物語。本編は「黒髪学園編」と「健軍女子高校編」に分けられるのだが、その後半の健軍女子高校編の一環で、「女子テニス部」のキャプテンである「山國姉妹」と対決するエピソードが描かれている(第181話&第182話/第19巻収録)。
 本作品は週刊少年漫画の限界とも呼ぶべき過激な性描写で知られ、内容的には有害図書指定されても文句は言えないレベルなのだが、ただの凡庸なエロ漫画とは異なるのが、その独特なエロのセンスである。毎回異なる女生徒達を相手に、決してマンネリ化することなく奇抜かつ多彩なパターンの性描写が展開されており、普通にギャグ漫画として読んでもそれなりに面白い。
 そして、エロ漫画の世界では昔からテニスを題材とした作品は多いのだが、本作品における菊之助は、おそらく他に誰も思い付かないような(実にアホらしい)エロ戦法を繰り出して山國姉妹と戦うことになる。というか、テニスでこんな戦い方を思考え出してしまう作者の発想力には、色々な意味で脱帽である(もっとも、さすがに第182話の方のオチは「なんだかなぁ」という印象ではあるのだが)。
 まぁ、作品全体としては黒髪学園編の方が面白かったかな、というのが正直な感想なのだが、上記のエピソードが収録された第19巻前後はスポーツ少女との対決が続く展開なので、それはそれで個人的に嫌いではない。エロに嫌悪感を示さない人であれば、一度くらいは読んでみても良い作品と言えよう。