浦川まさる『いるかちゃんヨロシク!』

いるかちゃんヨロシク 1 (集英社文庫(コミック版))

いるかちゃんヨロシク 1 (集英社文庫(コミック版))

連載:『りぼん』(1984-1986年)
単行本:集英社りぼんマスコットコミックス(1984-1987年) 全7巻
    集英社文庫コミック版(2000年) 全4巻


 1980年代の『りぼん』で活躍した浦川まさるの代表作。作者は本作品の後に『九太郎がやってきた!』『いちご金時れもん味』などを同誌に連載した後、『マーガレット』で『七星におまかせ』などを発表し、近年は姉の浦川佳弥と共に『サスペリアミステリー』誌上で「殺人現場は雲の上」などを描いている。
 主人公は、身長140cm台でありながら超人的な身体能力を持つ中学二年生の少女・如月いるか。彼女は家庭の事情により、東京の六段中学から(関西の?)倉鹿修学院中学に転校することになる。倉鹿修学院では「校内陸上オリンピック」の上位入賞者5名によって構成される「鹿鳴会」が実質的に生徒会としての機能を果しており、その会長である山本春海(はるうみ)といるかが出会うところから物語は始まり、彼女と春海を中心とする少年少女達の青春群像が、ソフトボール、剣道、サッカー、スキーなどの様々なスポーツを通じて描かれていく。
 本作品のことをそれなりに知ってる人々の間では、本レビューでこの作品を取り上げることに関して、「なぜ?」と思う人と、「いや、ちょっと無理があるだろ(苦笑)」と思う人に二分されるであろう。というのも、本編においているかが挑戦するスポーツは多岐に渡っているものの、実は彼女が「テニス」をプレイしている場面は、「1コマ+α」(第4巻91頁下半分)しか存在しない。はっきり言って、物語の展開上、その場面が無くても何ら問題がない程度の描かれ方しかしていないのである。
 にも関わらず、なぜここで紹介したのかというと、私に「この作品を紹介したい」と思わせるだけの「面白さ」があるからである。設定自体はいかにも「昔の少女漫画」的な浮き世離れした雰囲気を醸し出しつつ、あくまでもスポーツ漫画としての躍動感を大切にした作風は、一見アンバランスなようで、実に不思議な唯一無二の魅力に満ち溢れている。そして、そう思っているのが私だけではないということは、連載終了から20年が経過した今でも、ネット上で多くの人々がファンサイトを運営していることからも明らかと言えよう。