西野つぐみ「純情C調BOY」（『純情花マルGIRL』第1巻収録）

純情花マルGIRL 1 (ヤングジャンプコミックス)

初出：『ベアーズクラブ』（1993年）
単行本：集英社ヤングジャンプコミック『純情花マルGIRL』第1巻（1994年）

　かつて集英社が発行していた『ベアーズクラブ』という雑誌において、西野つぐみが描いた「純情シリーズ」と呼ばれる短編作品の一つ。単行本としてはヤングジャンプコミックス『純情花マルGIRL』の第一巻に（同シリーズの他の作品群と共に）収録。作者の代表作としては、『スウィート・ホーム』（白泉社）や『戦うメイドさん』（ぶんか社）など。近年は、夫である西野公平（『霊脳探偵ルナ＆サイコ』などの作者）と共に「木ノ花さくや」名義で、『エンカンター−遭遇−』などを発表しつつ、9ヶ国語に対応した花マルウィークリー（cybermanga.com）などを運営中。
　主人公は、高校一年生で「お気楽Ｃ調男」と呼ばれるサッカー部の補欠部員・大丸福助。死神の手違いにより、練習中に命を落としかけた彼は、女子剣道部部長の八王子姫子の身体に乗り移る生き霊となってしまう。元の自分の身体に戻って蘇生するためには、生前の自分が「一番やりたかったこと」を実行しなければならないと言われ、彼の想い人であるテニス部員の若葉みどり（姫子と同居中の従姉妹）とのＨを実行することを目指す、という物語。
　基本的には、ヤンジャン系統の「ちょいエロ漫画」の系譜の作品であり、あまり深く考えることなく明るい青少年の性春を楽しむ作品、と言えよう。若葉みどりはテニス部員という設定だが、彼女のテニスウェア姿が登場するのは冒頭部分のみなので、実質的には「テニス部漫画」としての要素も殆ど無い。
　この純情シリーズの中では最も非現実性が強く、また性描写も比較的温和ではあるが、物語のテンポも良いし、最後のオチも（まぁ、パターンと言えばパターンだが）歯切れが良い。また、個人的には、本編に登場する死神の「妙にカルいノリ」もお気に入りである。タイトル通りの「お気楽恋愛モノ」としては、まずまず楽しめる作品と言えよう。