神奈幸子『太陽にダッシュ!』

太陽にダッシュ! オンデマンド版 [コミック] (KCフレンドシリーズ)

太陽にダッシュ! オンデマンド版 [コミック] (KCフレンドシリーズ)

連載:不明(少女フレンド?)
単行本:講談社KCフレンド(1970年) 全1巻
    コンテンツワークス株式会社コミックオンデマンド(2005)


 おそらく1969〜1970年頃のフレンド系の雑誌で連載していたと思しき作品。1970年に講談社から単行本が発売された後、2005年にはオンデマンド出版として再版された。作者の神奈幸子は本作品以降、講談社系雑誌を舞台に『青い一角獣』『ガラスの橋』『ロスマリンの伝説』などを発表した後、やがてレディコミ誌へと転向。昨今はあおば書房で『プライド』などの作品を発表しつつ、アクリル画家としても活動している。
 主人公は、瀬戸内海の小さな漁村出身の女子中学生・池田佐和子。母の後を継ぎ、お茶の家元である結城家に「お手伝いさん」として住み込みで働きつつ、名門・紅ばら学園の生徒として通うことになった彼女の青春物語であり、物語の前半ではバレー、後半ではテニスに打ち込む彼女の姿が描かれている。
 旧版単行本の番号(526)が、青池保子の『ラケットに約束!』(524-525)の直後なので、おそらく日本における最初期のテニス漫画の一つと言って良い作品であろう。もっとも、テニス編はどちらかというと隣に住む少年・正人との人間関係の描写の方に重点が置かれており、スポーツ漫画としては前半のバレー編の方が面白い。ただ、「スライスサーブの習得」を一つのテーマとして描く姿勢はある意味でリアルであり、地味ながらも着実な構成と言うことも出来る。
 とはいえ、やはり単行本一本で二競技なので、どちらも少々中途半端というか、せっかく面白くなりかけてきたところで終了、という印象は拭えない。このスタイルであと数競技描いていれば、『姫子』『美里ちゃん』『いるかちゃん』などの源流と呼ぶことも出来るが、残念ながらそこまで続くだけの人気にも恵まれなかったらしい。
 とりあえず、40年近く前の作品なので、センスはひたすら古い。「コンコンチキ」「おどろき桃の木」「パンパカパーン」「タメゴロー」などといった単語が普通に出てくる辺り、これはもはや歴史漫画として読むべき作品なのかもしれない。