小野佳苗「流れ星聞いて」(『恋する森から』収録)

恋する森から (講談社コミックスフレンド)

恋する森から (講談社コミックスフレンド)

連載:『ハローフレンド』(1984年)
単行本:講談社コミックKC『恋する森から』(1985年)


 『しようよ』(講談社)や『純愛する?』(主婦と生活社)などで有名な小野佳苗の初期の短編作品。ちなみに掲載誌である『ハローフレンド』とは、1980年〜1987年にかけて講談社から発行されたフレンド系列の雑誌である。単行本としては、『恋する森から』の中に収録(同単行本内には他に「涙のらぶれたぁ」も収録)。
 主人公は、月寒高校の女子テニス部員・星子(ほしこ)。クラスメートで男子バスケ部の山本のことを密かに思いつつも、「同じクラスでフラれて、毎日顔を合わせていけるほど、あたしの心は丈夫じゃないから」という理由で、その気持ちを封印していた彼女が、彼に生じた「異変」を契機に、急速に二人の距離が縮まっていく過程を描いた物語。
 テニス漫画としての本作品は、冒頭で練習風景が描かれる程度であり、あまり見るべきところはない。むしろ、本作品において主眼が置かれているのは、「バスケ部員としての山本」の方であり、その意味ではまだ「バスケ部漫画」として読んだ方が適切かもしれない。
 作品全体の印象としては、やや展開が拙速というか、「詰め込み過ぎ」の感が強いのが残念な点である。物語の終盤の鍵となる「勘違い」が生じた部分の描写にしても、肝心の結末の描き方にしても、せめてあと2頁ほど使って描いてくれた方が、読者としても共感しやすかったのではなかろうか。物語のテーマ自体は悪くないだけに、少々勿体無い気がする。
 全体的にやや辛口の評価になってしまったが、個人的にはこの絵柄はそれなりに好みであり、主人公の心情描写も悪くないので、それほど酷評したい訳でもない。ただ、残念ながら「コレ」というセールスポイントが私には見つけられなかった、というのもまた事実である。まぁ、どちらかと言えば本作品よりも単行本の表題作の方が面白かった、というのが正直な感想かな。