松本るい『流れのお竜』

流れのお竜 (別冊フレンドKC)

流れのお竜 (別冊フレンドKC)

連載:『ラブリーフレンド』(1976〜1977年)
単行本:講談社フレンドKC(1977年) 全1巻


 『キャプテンと鬼ゆり』『初恋Uターン!』などで有名な松本るいが、かつて講談社が発行していた雑誌『ラブリーフレンド』に不定期連載した作品。単行本は廃刊して久しいが、現在はwebコミックとして閲覧可能。近年は、立正佼成会の開祖・庭野日敬の伝記や、自身のモンゴル旅行を題材としたエッセイ漫画などを発表している。
 物語は、高校一年生の主人公・岬竜子(みさき・たつこ)が、一端(いっぱし)学園に転校してきた初日に、校門前で同校のテニス部のエースである羽鳥朱鷺也(はとり・ときや)に自転車で衝突されるところから始まる。数々の高校で問題を起こしては退学・転校を繰り返してきた竜子であるが、この一端学園においても、学園のアイドルとして女生徒達の人気を独占する朱鷺也に一目惚れされたことによってスケ番グループから目をつけられ、様々なトラブルに巻き込まれていくことになる。
 一応、全四話構成となっているものの、不定期連載だったこともあり、実質的にはそれぞれが独立した読み切りに近い。ただ、それでも朱鷺也を初めとする第一話に登場するキャラ達は以後の作品においても(程度の差はあれ)登場しており、物語全体としての一貫性は保たれている。
 なお、朱鷺也がテニスの名手という設定は、作品全体の中ではそれほど重要な位置付けではないように見えるが、第三話以外では常に彼がテニスをする場面は描かれており、そのことが以後の作中の人間関係に多少なりとも影響を与えてはいるので、それなりに不可欠な要素と言うことも出来る。
 まぁ、ベタと言えばベタな内容なのだが、単純明快な浪花節娘のお竜と、彼女のことを健気に慕う優男の朱鷺也という関係は、個人的には結構好きな構図である。また、物語のテンポも良く、サクサクとストレス無く読み進める。ただ、さすがに最終話のオチは「いくらなんでも、やりすぎだろう(苦笑)」というのが正直な実感なのだが、まぁ、この時代の作品なら、これくらいの無茶もアリかな、とも思う。