三浦実子『ハイスクールウォーズ』

連載:『ハローフレンド』(1987〜1988年)
単行本:講談社フレンドKC(1993年) 全1巻
    講談社フレンドKC『ファンタジーだよ』第1巻(1993年)


 『FREE』『緑夢』『リターン』『KIRAI』などで有名な三浦実子(のりこ)が『ハローフレンド』で描いた四本の短編シリーズ。そのうち、「ハイスクールウォーズ」「悪い奴らをやっつけろ!」「放課後ダンディ」の三作は単行本『ハイスクールウォーズ』に、最後の「甲子園へつれてって」は『ファンタジーだよ』の第1巻に収録されている。
 主人公・吉住貴和(よしずみ・きわ)は、中学時代に関東ベスト4の実績を持つテニス選手。蒼稜学園高校に進学した彼女は、実質的に学園を取り仕切る「部連(倶楽部連盟)メンバーズ」の一員に選ばれるものの、メンバーズのエリート主義的な態度を嫌う彼女がその話を断わったことで、メンバーズを取り仕切る石井総長(ボクシング部部長)に睨まれ、彼の手による様々な圧力と戦うことになる、というのが最初の「ハイスクールウォーズ」の概要。以後のシリーズでも貴和と石井、そして貴和を助ける謎のナンパ男・佐々木充の三人を中心として、様々な物語が展開されることになる。
 作者自身、「これを描いていた当時(87〜88年)においても、既に時代錯誤な内容」などと述懐しているように、基本的には80年代前半の校内暴力全盛の時代をイメージして作られた作品であり、全体的に非常に古風な学園ドラマである。しかし、それでも今読んでも面白いと思える要因は、主要3キャラの魅力と、(やや、あざとさはあるものの)クドくなりすぎないテンポの良さであろうか。
 ちなみに、テニス漫画としては二作目の「悪い奴らをやっつけろ」で、貴和を中心とするテニス部が試合をする物語が描かれているものの、描写自体はそれほどきっちり描いている訳ではなく、あくまでもその背景の学園陰謀劇が本筋である。
 確かに、今読むと少々苦笑したくなるような展開もあるが、個人的には大好きな作品であり、出来ればこの三人の物語をもう少し色々描いて欲しかった、というのが正直な感想である。古本であれば今でも容易に手に入るので、興味がある人にはぜひ御一読をお勧めしたい。