小椋恵里子『かっとびアタッカー!!』

連載:『週刊少女フレンド』〜『少女フレンド』(1988〜1989年)
単行本:講談社フレンドKC(1989年) 全2巻


 『おもしれーじゃん!』や『ポケットから−夢』の作者である小椋恵里子の代表作の一つ。掲載誌は『週刊少女フレンド』であったが、連載終了間際に『少女フレンド』へと誌名変更された。ちなみに、講談社X文庫シリーズでも同名の作者が二本の小説(『ちょっと危ない恋かしら』『だって好きなんだもん』)を発表しているが、同一人物か否かは未確認。
 主人公は、大企業・桜木建設の社長令嬢・桜木美也(みや)。金鍔中学バレー部でマネージャーを務めていた彼女が、隣に住むレストラン・ロイヤルポッポの社長令嬢であり、同バレー部のエースアタッカーであった神谷麗子と共に、バレーの名門・明光学園に入学するところから物語は始まる。名門バレー部への入部に期待を膨らませていた二人であったが、監督である五十嵐の方針と激しく対立し、揃って退部。代わりにテニス部、バスケ部、柔道部などからメンバーを引き抜いて「新バレー部」を結成して打倒・バレ−部を目指すことになる。
 ストーリー自体は非常にオーソドックスなスポ根物であり、バレー漫画としてはまさに王道中の王道的な内容である。ただ、一方で序盤における部員集めの場面においては、いずれも真っ向勝負ではなく、イロ、金、イカサマなどの裏技ばかりを駆使して篭絡しており、主人公・美也の、真剣に練習に打ち込む姿と、目的のためなら手段を選ばぬ狡猾さとのギャップが面白い。
 テニス関連の描写としては、最初に仲間になるテニス部のホープ・柳川浩子(通称:ブリ)の練習風景が何度か描かれる程度であり、その意味では決して「テニス漫画」とは呼べないのだが、テニス時代の技術を生かしてバレーで彼女が活躍する様子は(現実性があるかどうかはともかくとして)痛快である。
 一応、物語としてはキリの良いところで終わってはいるものの、個人的にはもう少し続きを描いて欲しかった。ただ、さすがに80年代末期にこんなノリのスポーツ漫画は流行らないだろうなぁ、とも思う。せめて、王子様役である津村兄弟との恋愛話を発展させることが出来れば、もう少し人気も出たのではなかろうか。