大場つぐみ(原作)/小畑健(作画)『DEATH NOTE』

DEATH NOTE (3) (ジャンプ・コミックス)

DEATH NOTE (3) (ジャンプ・コミックス)

連載:『週刊少年ジャンプ』(2003〜2006年)
単行本:集英社ジャンプコミックス(2005〜2006年) 全12巻


 当初は「土方茂」の名でデビューし、後に『ヒカルの碁』(原作:ほったゆみ)で一世風靡した小畑健が、同作品の後にジャンプで連載したヒット作。後に映画化&アニメ化も果した。原作者の大場つぐみは他作品での活動が一切不明の謎の存在だが、「ガモウひろし」と同一人物であるという説が有力。
 物語は、高校生の主人公・夜神月(やがみ・ライト)が、死神リュークが落とした「デスノート」を拾うところから始まる。このノートに人間の名前を書くことで(その人間の顔を把握していれば)その者を殺すことが出来る、という力を得た月は、法で裁けぬ悪人達をその力を用いて次々と殺害することで、悪人のいない新秩序を築こうとする。それに対して、その謎の連続怪死現象の謎を解き明かすため、ICPOは謎の探偵・Lを招聘し、一連の事件を操る謎の存在(=月)の正体を明らかにしようとする、というサイコサスペンス・ストーリーが展開される。
 本作品の詳細については既に数多くのメディアで語られているので、今更語る必要も無かろう。このレビューで取り上げるべきことは、第20話(単行本第三巻収録)で描かれる、月とLのテニス対決である。大学に入学した直後の二人が、互いの腹をさぐり合いながらテニスを打ち合うというエピソードなのだが、その描写のレベルがあまりにも高度であったため、連載当時は同誌に掲載されていた(しかも、よりによってこの号では連続して掲載されていた)テニス漫画との比較が話題を呼んだ。
 一応、月は中学時代にテニスで全国制覇した経歴の持ち主であり、それは「心理戦」を軸とする本作品における彼の天才ぶりを裏付けるための一つの要素と言えよう。ただ、残念ながら上記のLとのテニス対決の描写において、テニスというスポーツそれ自体が持つ心理戦の側面が描かれているとは言えず、その意味では折角の設定を生かしきれていないのが残念なところである。
 とはいえ、作品全体の完成度の高さは否定しようも無く、ジャンプ誌上に残る異色の傑作であることは間違い無い。特に、第一部(L編)の最後の駆け引きの妙は必見である。