にしむらともこ『天使のはぴねす』

天使のはぴねす 1 (フラワーコミックス)

天使のはぴねす 1 (フラワーコミックス)

連載:『ちゃお』(1999年)
単行本:小学館ちゃおフラワーコミックス(1999年) 全2巻


 『すくらんぶる』シリーズなどでお馴染みの、ちゃおの人気漫画家にしむらともこの初期の連載作品。本編は全六話だが、外伝として第1巻には「はぴねすのたまご」、第2巻には「はぴねすの魔法」が収録されている(ちなみに、本編だけならちょうど単行本一冊に収まる長さ)。また、第1巻では他に「風色のスタート」と「ドキドキさせてよ!」(デビュー作)が、第2巻には「君へのSTEP」と「Lovely」が同時収録されている。昨今の作者は『ちゃお』にて『極上!!めちゃモテ委員長』を好評連載中。
 主人公は、天使の一族であることを知らずに人間界で育った少女・天野かのん。彼女が、同じ中学の男子テニス部員の相馬潤を相手に、無意識のうちに「天使の力」を使ってしまうところから本編が始まる。相馬に想いを寄せるかのんは、彼への気持ちと天使としての使命の狭間で悩みつつ、彼女の家に住むリスの姿をした聖獣・ハピの助言を受けながら、彼のために自分が出来ることを導き出していく、という物語。
 かのん自身はテニス部員ではないものの、女子マネージャーの黒崎芽亜(めあ)や、相馬の友人の宇佐美紘輝(こうき)など、主要キャラの大半はテニス部員であり、「テニス部漫画」と呼んでも差し支えのない内容である。ただ、全編通して試合や練習の場面はほんの一瞬しか描かれていないので、あくまでも「テニス」は「背景設定」に過ぎないことも事実である(個人的には、相馬と紘輝の練習試合を一度くらいは描いて欲しかった)。
 少女漫画としては、「無難に面白い」というのが率直な感想である。魔法、天使、小動物、美少年といった構成は、あざといと言えばあざといのだが、素直にその世界を受け入れてしまえば、普通にそのまま楽しめる。正直、最後のまとめ方はちょっと唐突というか御都合主義的なようにも思えるが、これはこれで少女漫画としては素直に受け入れるべき展開かな、という気もする。個人的には、実は番外編の「はぴねすの魔法」が一番好きだったりするんだけどね。