神崎将臣(原作)一本木蛮/(漫画)『最強無敵ド根性一家』

連載:『月刊少年ガンガン』(1991〜1992年)
単行本:エニックス・ガンガンコミックス(1992年) 全1巻


 『KAZE』や『重装工兵ゼノン』などの硬派な作風で知られる漫画家・神崎将臣が、『愛・こねくしょん』や『勇者コジロー2』などの作者であり「コスプレ漫画家」の異名を取るマルチクリエイター一本木蛮と手を組んで、『月刊少年ガンガン』で連載した作品。現在の神崎はヒット作『ゼノン』の続編『XENON-199X・R-』を、一本木は自身の体験に基づく『戦え奥さん!! 不妊症ブギ』を、それぞれ連載中。
 日本最大にして最後の任侠ヤクザ『根性一家』の首領の長女である主人公・根性きめるが、父親の手違いにより、男子校である「男子用(ダンジョン)学園」に入学してしまい、学園を支配する「クラブ統聖委員会」と対決する、という物語。毎回、彼女の前に様々な部活・研究会の者達が立ちはだかり、彼女とその子分である明智乱歩(探偵研究会)&大仁田涙(プロレス研究会)がそれを撃破する、という展開が七話にわたって展開され、その中の第三話で、テニス部部長・夢野(全国大会優勝個人7回・団体8回・岡ひろみ杯4回・お蝶夫人杯3回)と対決する。
 この設定だけでも分かる通り、かなり破天荒かつ時代錯誤(本編中で作者自身も確信犯であることを暴露)な内容であり、本気とギャグの境目が非常に微妙な、勢いだけで押し切った作品である。そして、第三話におけるテニス対決においても、もはや非現実的という言葉では表現しきれないほどの超展開で決着しており、読後にはひたすら「呆然」感だけが漂うことになる。
 神崎が原作を担当するのも一本木が他者の原作で漫画を描くのも本作品が初めてだったらしいが、初挑戦故の「やりたい放題」な作風が実に心地良い。ただ、冷静に見れば非常に(絵柄的にも構成的にも)「読みにくい漫画」であることも事実である。とはいえ、おそらく今のガンガン系の雑誌では絶対に読むことが出来ない、ただひたすら「熱さ」と「激しさ」と「馬鹿馬鹿しさ」だけを詰め込んだ漫画であるということを理解した上で、今の若いガンガンの読者層にも、ぜひ一度は読んでみて欲しい作品である。