バロン吉元『高校四年』

連載:『ヤングコミック』(1976〜1978年)
単行本:少年画報社コミック(1977年) 全1巻
    双葉社アクションコミックス(1978〜1979年) 全7巻


 『柔侠伝』『殴り屋』『どん亀野郎』などで知られるバロン吉元少年画報社の『ヤングコミック』で連載した作品。単行本は、少年画報社から1巻(『夢の島』)のみを発売した後、双葉社から『陽光編』『真紅編』『若草編』『叙情編』『飛翔編』『無頼編』『酔狂編』の順で七冊の単行本としてまとめられた(少年画報社版の1巻の内容は、双葉社版の陽光編・真紅編に収録されている)。
 本作品は四年制の京浜高校木材工業科(通称:木工科)の男性生徒達の青春群像を描いたシリーズであり、第一部(陽光編・真紅編)、第二部(若草編〜無頼編)、第三部(酔狂編)から成り立っている。全てのシリーズに主人公として登場するのは、巨漢・怪力で小学一年生程度の学力しか持たない田の神(たのかん)マゴハチローであり、それに加えて第一部では女好き/バイク好きで悪知恵に長けた同級生・早月弓弦(さつき・ゆづる)が、第二部では芸者の置屋の息子である後輩・日絵虎太郎(にちえ・こたろう/通称ニーチェ)と新任の木工科担任教師・六反田学が、それぞれ主要人物として田の神と共に物語を盛り上げる。
 木工科に集う男子学生達は皆、勉強嫌いで品性下劣な不良学生ばかりであり、そんな彼等を見下す品行方正な普通科の生徒達に対して、第一部では早月を中心とする木工科の生徒達が様々な嫌がらせを繰り広げる。そんな木工科の生徒達が、普通科主催のテニス大会(混合ダブルス)に出場するエピソードが、若草編の後半から真紅編の前半にかけて描かれ、そこでも早月の悪知恵と田の神の愚鈍で下品で一直線な行動が読者を楽しませる。
 物語全体の構成としては、途中から連載の方針が迷走していたようで、第一部のラストなどはかなり中途半端な形で終わっている。また、物語的にも絵柄的にも、70年代後半という時代を強く反映した内容であり、今の御時世では決して万人に勧められる作品ではないが、一種の「歴史漫画」として読むと、これはこれで実に味わい深い。特に最終回のエピソードは、色々な意味で非常に感慨深いラストに仕上がっていると私は思う。